2016年6月20日月曜日

【書評】岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(新潮文庫)

ある事柄を小説に落とし込む手法の完成形


 2009年刊行の大ベストセラー『もしドラ』。社会現象となるほどの爆発的な売れ行きを示した。流行り物に懐疑的な(ひねくれ者の)私は
「ホンマにオモロイんかいな」
と半信半疑で手に取ったのだが……参りました。これはよくできている。

 そのままで学ぶには難しい知識や概念などを、物語に落とし込んで小説風に仕立てあげることにより、分かりやすく伝えようとする試みは、これまで何度も行われてきた。その一つの完成形が本書であるといっても過言ではない。
 まず、小説と事柄(ドラッカーの『マネジメント』)が非常にうまく絡み合っているのが本書の特長だ。高校野球の女子マネージャーが『マネジメント』を読み込んで実践することにより、野球部を強くしていくという設定には舌を巻いた。女子マネと『マネジメント』の組み合わせが、意外なだけでなく「効果的」なのだ。
 また、ある事柄を小説仕立てで伝える手法は、事柄と小説のバランスが肝要だ。事柄のほうに傾きすぎると、何のために小説仕立てにしているのか分からない。一方、小説のほうに傾きすぎても、事柄が伝わらない。小説が面白すぎても、つまらなさすぎてもダメなのだ。本書は、この按配が絶妙なのである。小説のストーリーは素人っぽいが、そこがよいのだ。
 ミリオンセラーも納得の、よく組み立てられた本だ。おそらく、編集者の寄与も大きかったのだろう。

 本書で紹介されるドラッカーの考え方からも、さまざまなヒントを得た。最も印象に残ったのは、リーダーに必要な資質についてだった。ドラッカー曰く、リーダーに最も必要な資質は「真摯さ」なのだそうだ。知識や手法は後から学ぶこともできるが、真摯さや情熱を持たない人にそれを付け加えるのは無理だという。なるほどその通りだ。
 というわけで、私はリーダーには不向きなことが改めて分かったのでした…。




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【映画評】『バケモノの子』(2015)

分かっちゃいるけど、グイグイ引き込まれていってしまう


 家出した男の子がバケモノの世界に迷い込み、一匹のバケモノと出会う。そのバケモノは、腕は立つが性格は粗暴で、これまで何度も弟子の育成に失敗している。
 この血のつながらない二人が反発しつつも心を通わせ、次第に通じ合っていき、お互いが成長していくという、ぶっちゃけよくあるストーリーだ。
 しかしテンポがよく、周辺キャラも魅力的で、いいタイミングで新展開が差し込まれる。そのため、分かっていてもグイグイ引き込まれていってしまう。アニメのお手本のような作品である。

 バケモノと男の子の関係が、師弟関係とも親子関係ともまた違う感じなのが心地よい。二人の関係が絶妙なバランスの上に成り立っているのが、本作のポイントである。
 ラストが少し物足りないようにも思ったが、それも中盤がよすぎる反動かもしれない。師弟でも親子でも友人でもない、固い絆を見事に描いた作品。




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2016年6月19日日曜日

【中央競馬予想の回顧】ユニコーンS、函館スプリントS、米子S、天保山S(2016)

 今週はユニコーンS。
 ◎ストロングバローズはがっちり2番手をキープ。思ったよりも前の位置取りだ。直線入り口で手綱を持ったまま先頭に立ち、後ろから人気のゴールドドリームが来るのを待つ。直線はこの2頭のマッチレース。最後は外のゴールドドリームがねじ伏せて1着。結果論だが、ストロングバローズはちょっと仕掛けを待ちすぎたかもしれない。
 馬券は、安かったが馬連をとって少し浮いた。

 函館では函館スプリントS。
 ◎オメガヴェンデッタは何と1番人気。中団からレースを進めると、4コーナーでは外の馬をはじくようにして進路を確保したが、最後の伸びを欠き、6着。もうワンパンチ足りなかった。
 勝ったのはソルヴェイグ。2番手から抜け出して、穴を開けた。GII勝ち馬が12番人気とは盲点だった。
 馬券はハズレ。

 阪神では米子S。
 ◎クイーンズリングは断然の1番人気だったが、ケントオーに4馬身差をつけられて完敗。ケントオーの激走を褒めるべきなのだろうか。
 馬券はケントオーを買っておらず、ハズレ。

 土曜は阪神で天保山S。
 ◎ポメグラネイトは無理なくハナを切ったように見えたが、直線で後続に詰め寄られると、ばったり止まって8着に惨敗。逃げ馬が負けるときはこんなものかもしれないとはいえ、ガッカリ。
 馬券はハズレ。

 今週は4勝1敗。他もチョロチョロでトータルもややマイナス。来週は上半期の締めくくり。気持ちよく終わりたいところだ。

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2016年6月18日土曜日

【中央競馬予想と与太話】ユニコーンS、函館スプリントS、米子S(2016)~なぜ米子が~

 今週は東京でユニコーンS、函館で函館スプリントS、阪神で米子Sが組まれている。
 米子Sは都市の名前シリーズの一つ。米子は鳥取県の都市だが、なぜかオープン特別に抜擢されている。県庁所在地である大津特別や鳥取特別(ともに1000万条件)と比べると、その優遇ぶり(?)がわかる。米子とJRAの間には、何か深い関係があるのだろうか。

 レースにいってみたい。予想はユニコーンSを中心に。
 ユニコーンSは数少ない3歳限定のダート重賞。ダートの有力どころが勢揃いするため、ハイレベルになることが多い。昨年の勝ち馬ノンコノユメをはじめ、数々の有力馬を送り出している。
 今年も、ハイレベルといってよいだろう。本命は◎ストロングバローズ。ここまで5戦すべてダートを使って3-2-0-0。2度の敗戦がいずれも東京というのは少し気がかりだが、大きくは負けていないし、問題ないということにしておきたい。展開を味方に、ヒヤシンスSで破れた相手を逆転したい。
 そのヒヤシンスSの勝ち馬がゴールドドリーム。人気でも厚く押さえる。もう一頭、これも人気だがグレンツェントも押さえたい。人気サイドで収まると見た。

 函館スプリントSはオメガヴェンデッタ、米子Sはクイーンズリングを狙う。

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2016年6月17日金曜日

【中央競馬予想と与太話】天保山ステークス(2016)~日本一の座から転落?~

 今週から函館競馬が開幕。私が唯一行ったことのない競馬場だ。いつかは行ってみたいものだが、そんなお金はどこにもない…。大万馬券を当てて、原資にしたいところだ。

 そんな土曜の阪神メインは天保山S。
 天保山が「自称、日本一低い山」だというのは毎年使っているネタで、面白いので今年も使おうと思っていたら、天保山山岳会のウェブサイトがなくなっていた。どうも、他の山(おそらく仙台市の日和山)に日本一低い山の立場を奪われてしまったようだ。残念。

 レースにいってみたい。
 天保山Sはダート1400 mのオープン特別。10頭立ての少頭数となった。
 本命はポメグラネイト。コンスタントに使われて、コンスタントに結果を残す、馬主孝行な馬だ。今回は、すんなり主導権を握れそうなメンバー構成。最内枠からの逃げ切りを期待したい。
 推奨穴馬はウォータールルド、と思っていたらけっこう人気しそうだ。少頭数でもあり、人気どころで収まりそう。

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2016年6月16日木曜日

【書評】是枝裕和・佐野晶『そして父になる』(宝島社文庫)

映画の行間を埋める小説。映画の背景が浮かび上がる



 是枝裕和監督、福山雅治主演の映画の小説版。映画の原作というわけではなく、まず映画があって、それを小説化したのが本作だ。
 映画の行間が埋まってゆく。いい換えれば、映画の背景事情が事細かに説明されていく。私は映画をすでに見ているので
「あのシーンにはこういう思いがあったのか」
「たしかにその場面ではこういう表情をしていた」
などなど、得心するところが多かった。

 それはそれですっきりしたのだが、「映画を説明するための小説」なので、記述が説明的すぎて、解釈の余地がないようにも思った。映画の余韻を残しておきたい人は読まないほうがよいかもしれないが、隅々まで納得したい人にはお勧めである。
 映画→小説の順に読むのがよいだろう。本作に限らないが、やはり「原作」のほうから先に攻めるのがよいように思う。

《粗筋》
 学歴、仕事、家庭など、すべてを手に入れてきた男が主人公。しかし病院の過失(取り違え)により、息子とは血がつながっていないという衝撃の事実が発覚する。
 親子とは、血のつながりなのか、それともともに過ごした時間なのか。どちらの「息子」を選べばよいのか。改めて「親子とは何なのか」を考えさせる名作。




そして父になる [ 是枝裕和 ]
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2016年6月15日水曜日

【書評】アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』(ハヤカワ文庫)

「これぞSF」でありながら、ミステリーとしても秀逸


 ロボットと人間はどこまで通じ合えるのか、そしてどこまで通じ合うべきなのか。SFの王道テーマを描いた名作。SFとしての完成度の高さは言うまでもないが、ミステリーとしても実によくできているところがニクい。

 「宇宙人」の作った精巧なロボットとコンビを組んで殺人事件を追うことになった警察官が主人公。しかし、ここでいう「宇宙人」は八本足の生命体ではなく、人間なのだ。はるか昔に宇宙に旅立ち、地球とは異なる惑星で文明を築いた開拓者たちの末裔が、地球に帰ってきた。
 彼らは地球に居住するが、そこで「宇宙人」が殺害される事件が発生。宇宙人側は地球人側に犯人がいると決めつけ、人間型ロボットを地球人側に送り込む。そのロボットと協同で事件の解決に当たる警察官が主人公だ。
 この警察官は、いや地球人はみな、ロボットには懐疑的だ。ロボットの存在は人間の仕事を減らし、人間を破滅に追いやる悪の元凶とみなされているのだ。
 この設定の元、人間とロボットの交流が描かれる。人間と機械の線引きはどこにあるのか。ロボットに心はあるのか。「これぞSF」というべき、王道テーマだ。

 もう一つの軸は殺人事件。誰が、何のために宇宙人を殺害したのか。人間とロボットがお互いの知恵をあわせ、徐々に真相に近づいていく。ミステリーとしても実によくできている。これが名作たるゆえんだろう。

 この本の出版(1954年)から半世紀以上が過ぎ、ついに人工知能が人間の知的活動の領域に入り込もうとしている。アシモフ氏はそんな未来を見越していたのだろうか。いま読んでも全く古くないどころか、いまこそ読むべき一冊だ。




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【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...