2012年1月30日月曜日

書評 クラーク・アシュトン・スミス『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』(創元推理文庫)

 アヴェロワーニュという架空のヨーロッパの都市を舞台にした,魔術や妖術の短編集.それに加え,降霊術をネタにした短編も収められており,合計で18の話が収録されている.
 ほとんどの話はアンハッピーな終わり方をするのだが,ホッとするような,ほんのりと暖かい読後感が得られるのが不思議である.

 一つ一つの話はそれほどひねりはなく,アッと驚くような結末も待っていない.しかし,読み進めていくうちにクセになってくる.どっぷりハマるわけではないのだが,親近感がわいてくるとでも言えばよいのだろうか.オチは見えているのに思わず笑ってしまう,吉本新喜劇のようなものか(ちょっと違うような).

 黒魔術,魔女,降霊術,悪魔などの言葉に惹かれる方にはお勧め.中世ヨーロッパを舞台にした,灰色の魔術の世界を堪能できるだろう.
 また,ほとんどの話は「恋」がテーマであることも特徴と言える.やはり,魔術と色恋はセットじゃないとね.



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