2012年1月4日水曜日

書評 溝口優司『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』(ソフトバンク新書)

こんな本が読みたかった。
いやいや、モヤモヤしていたことがスッキリ解消しました。私はグレートジャーニーの流れ、特に日本における人類(ホモ・サピエンス)の流れを知りたいと思っていた。そこで目についたのが本書だったのだが、まさにど真ん中ストライク。私の持っていた疑問に、ズバリと、かつ分かりやすく答えてくれた。

本書は3章から構成されている。
第1章では、猿人がどのようにして人類(ホモ・サピエンス)に進化したのか、その過程が述べられている。進化の過程がはっきりと判明しているわけではないのだが、現在分かっていることと、そこから推定される進化の道筋が、分かりやすく説明されている。
第2章では、アフリカで誕生した人類が旅に出て、15万年あまりの年月をかけて世界中へと広がっていく様子が書かれている。そう、これがグレートジャーニーだ。なぜ白人はヨーロッパに出現したのか。なぜアフリカ人は唇が分厚いのか。なぜ日本人は短足なのか。そんなうんちくも含めつつ、流れるように人類の旅の歴史が描かれている。
第3章では、日本にやってきた人類はどのような人たちだったのかが解説されている。私が最も興味のあるのもここだったのだが、今まで頭の中で漠然としていたことがスッキリと整理され、たいへん気持ちよかった。
概要を書くと、日本には約2万年前に南方系の縄文人がまずやってきた。彼らは長年、幸せにやっていた(?)のだが、そこへ約3000年前に北方系の弥生人が稲作という技術を携えてやってきて、縄文人と(おそらく混血しつつ)置き換わっていった。これが現在の日本人の血統のベースとなるらしい。こう書いてしまうと
「何だ、それだけのことか」
と思われてしまうかもしれないが、そのように考えられている根拠や推定の方法も含め、説得力を持った、かつ分かりやすい説明がなされている。
日本人はどこから来たのか興味のある方は必読だと断言しておきたい。

本書を読むと「日本人」も、つい3000年前から大規模な混血が始まったばかりのヒトの集団であり「単一民族」という言葉がいかにあやふやなものかが分かる。
人類全体という観点から見ても、つい20万年前にはアフリカの一部で暮らしていた集団が世界中に広がったにすぎない。「人類みなきょうだい」とはよくいったものだ。「イエスだ」「いや、ムハンマドだ」「いやいや、そのどちらでもなく…」などと対立しているのがアホらしくなってくる(そりゃ、現実はそう簡単にはいかないのは分かってますが)。
ダックスフント族とシベリアンハスキー族が、その考え方の違いから、地球をも滅ぼしかねないような大戦争を繰り広げているのをわれわれ人類が見たら、きっと
「アホか、やめときなはれ」
と言うに違いない。
もし、アンドロメダから地球を見ている宇宙人がいたら、同じように言うだろうなあ。



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