2016年4月20日水曜日

【書評】伊藤計劃・円城塔『屍者の帝国』(河出文庫)

伊藤氏と円城氏の個性がぶつかり合う、異色のコラボ作品


 伊藤氏の未完の遺作を、円城氏が書き継いで完結させた、異例のかたちのコラボ作品。どこまでを伊藤氏が書き、どこからを円城氏が引き継いだのかは知らないが、それぞれの個性がよく出ているにもかかわらず、破綻せずに一つの物語として完結している。

 舞台設定は分かりやすい。死者に魂をインストールして「屍者」として蘇らせる手法が確立することに成功した、近世のイギリスが舞台。人間と非人間の境目、生と死の境目を、違和感なく物語の主軸に据える舞台設定のうまさは、伊藤氏によるものだろう。
 中盤以降は、「屍者」の秘密に迫る冒険譚。屍者とはいったい何なのか、人なのか人ではないのか。屍者を追うことにより「生きているとはどういう状態なのか」をえぐり出す。難解だがなぜか惹きつけられる描写の連続は、円城氏の筆致だ。
 現在日本SF界の二大巨頭の世界観をいちどに楽しめる、一粒で二度美味しい(古い…)作品だ。




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