2014年10月23日木曜日

書評 マイケル・サンデル『これから「正義」の話をしよう』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

「白熱教室」がなぜ人気なのか。さらに知りたくなった。


 数年前に話題になった「白熱教室」のマイケル・サンデル先生。そのサンデル氏が自らの考えを綴ったのが本書。あの「白熱教室」の根底にある考え方が披露されているのだろうと、おおいに期待して読んだのだが…ちょっと期待はずれだった。

 本書では、サンデル氏の「道徳」に対する考えが述べられている。何をもって「正義」とするべきなのかが書かれている。
 たとえば、サンデル氏はこんな問いを投げかける。
「ここであなたが人を突き飛ばして電車を止めたら、大勢の命が救われるとする。さてあなたは、その人を突き飛ばすべきなのか」
こういう状況で、人を突き飛ばすのが正義なのか、それとも突き飛ばさないのが正義なのか。こんな感じで問いを立てつつ「正義」についての考察を深めていく。

 このように書くと、とても興味深いし、実際に「白熱教室」は非常にエキサイティングなのだろうが、本書ではその興奮を感じ取ることができなかった。
 まず、難しいのだ。原文が難しいのか、それとも訳文がよくないのかは判断できないが、とにかく内容が頭に入ってこない。私がこの分野(道徳、哲学)に疎いことを差し引いても、十分に難しいと思う。「難解」というよりも「分かりにくい」のだ。

 テレビで白熱教室を見てから本書を読んだらまた違う感想をもったのかもしれないなあ。サンデル氏の考えを知るのに、まず本書から始めるのはお勧めできない。
 書くことが得意な人と、話す(講義)のが得意な人がいるということなのかもしれない。




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2014年10月19日日曜日

【予想の回顧】秋華賞、府中牝馬S、清水S(2014)

 今週は秋華賞。
 レースは大きく二つの集団に分かれ、後方集団の先頭から順にショウナンパンドラ、対抗の○タガノエトワール、本命の◎ヌーヴォレコルトと並ぶ。この3頭のうち、ショウナンパンドラは内を突き、他の2頭は外を選択。
 レースは直線へ。ショウナンパンドラが内からスルスルと抜け出す。タガノエトワールは外をスムーズに追い上げる。ヌーヴォレコルトはそれにフタをされるかたちで、一瞬待たされた。これが最後に響いたのか、タガノエトワールはかわしたが、ショウナンパンドラを捉まえることはできず、2着まで。実力は示したといえるだろう。
 勝ったのは内を抜けたショウナンパンドラ。フサイチパンドラに続き、2頭目(たぶん)のパンドラGI牝馬になった。勝つときはこんなもんだろう。中団から最内に進路をとって、スイスイと馬群を抜けてきた。ちょっとうまくいきすぎた感があるので、本物かどうかは微妙。次走に注目したい。
 馬券は、ショウナンパンドラを押さえておらず、ハズレ。

 土曜は東京で府中牝馬S。
 本命の◎ウリウリは好発から下げて中団の前につけ、最内をついた。いったんは抜け出しそうな気配だったので「よし」と思ったのだが、ラスト200 mで失速し、9着。差し馬の展開になってしまった。距離も少し長いかもしれない。

 清水Sは◎マルタカシクレノンが想定通り2番手につけたが、直線は後退する一方で、9着に惨敗。このクラスでは厳しいのだろうか。

 今週は3戦0勝。GIシーズンの初戦で躓いた。

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2014年10月18日土曜日

【予想と与太話】秋華賞(2014)~一本かぶりだが~

 なぜか今週から福島がスタートし、三場開催となっている。なぜ京都・東京開催の2週目からスタートするのだろうか。中途半端やなあ…。

 そんな日曜は京都で秋華賞が行われる。いよいよ本格的なGIシーズンの始まりだ。
 秋華賞は女王杯の古馬開放に伴ってできたレースで、比較的新しいGIである…と思っていたら今年で19回目。どこが新しいねん。
 秋華賞といえば思い出すのがブゼンキャンドル。1999年だから、第4回のこのレースのチャンピオンだ。12番人気の低評価を覆し、これまた人気薄のクロックワークと2頭で怒濤の追い込みを見せた。印象に残るGIレースの一つである。
 このときやブラックエンブレムの印象が強いので「荒れるレース」という印象があるのだが、たいがいの年は堅く収まっている。春の実績馬が結果を出しているのだ。

 レースにいってみたい。
 桜花賞馬が不在、2歳女王は前走で凡走。となれば前哨戦を制したオークス馬、◎ヌーヴォレコルトが一本かぶりの人気になるのも仕方がない。ハープスターが欠席しているためか「押し出された人気馬」のように見えてしまうが、この馬の実力も相当なもの。無理に逆らう必要はなかろう。この馬が本命。
 となれば、相手は絞りたい。相手筆頭はタガノエトワール。未勝利を勝った直後のローズSでヌーヴォレコルトの2着に差してきた。1勝馬が結果が出ていないのは承知だが、このメンバーなら。
 もう一頭、狙ってみたいのがバウンスシャッセ。オークスではヌーヴォレコルト、ハープスターから0.1秒差の3着だった馬だ。ここ2走は古馬の牡馬相手の洋芝と、不良馬場でのレース。度外視したい。この馬を推奨穴馬とする。馬券はもう1、2頭押さえると思うが、それは明日に決める。
 レッドリヴェールは前走が不発だったのに、中間もビッシリとは追われていないようだ。上積みも少なそうなので評価を下げる。

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2014年10月17日金曜日

【予想と与太話】府中牝馬S、清水S(2014)~前走は度外視~

 来週は北海道へ出張する。その前にばっちり当てて、お土産代を増やしたいところだ。

 そんな土曜の東京メインは府中牝馬ステークス、阪神メインは清水ステークスである。
 府中牝馬Sはエリザベス女王杯のメイン前哨戦ということになっている別定のGII戦なのだが、なぜか本番に結びつかない。秋華賞や天皇賞・秋をステップにした馬のほうがかなり優勢なのだ。理由はよく分からないが、今年もこの傾向が続くのだろうか。

 レースにいってみたい。
 13頭とやや少なめの頭数になったが、本番でも人気しそうな馬が名を連ねている。このレースの結果が、本番での人気に大きく影響しそうだ。
 その中から、本命は◎ウリウリ。前走は大外枠で逃げ馬が勝つ展開では厳しかった。度外視したい。2、3走前は重賞で2、1着だから力は足りるはず。休み明けは苦にしないが、輸送競馬は少し心配。2回目の府中で、慣れが見込めることを期待したい。
 推奨穴馬はオツウ。課題は満載だがハマれば。

 清水ステークスは◎マルタカシクレノンを狙う。先行有利の馬場で、前に行って粘ってほしい。フルーキーに差されたら仕方がない。

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2014年10月16日木曜日

書評 東野圭吾『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』(集英社文庫)

『マスカレード・ホテル』を読んだら、さっそく続編も読みたくなって『マスカレード・イブ』も立て続けに購入してしまった。東野小説、恐るべし。


 東野氏の新シリーズ「マスカレード・シリーズ」は、ホテルを舞台にしたミステリーだ。「ホテル・コルテシア」という高級ホテルで起きる事件を、若きホテルウーマンである山岸尚美を主人公に描いている。
 ホテルにはさまざまな客がやってくるが、彼らはみな「仮面」を被っている。さまざまな客が仮面を被って繰り広げる物語が仮面舞踏会、すなわち「マスカレード」というわけなのだ。

 本書のジャンルは、もちろんミステリーだ。しかし本書は、事件の過程で出てくるホテルの裏事情を堪能するための小説である(独断)。とはいえ、ミステリーとしての謎解きや犯人捜しももちろん上質であるところが、さすが東野氏である。
 ストーリーの軸にはしっかりとミステリーを据えつつ、さまざまな客の「仮面の裏」が暴露される。他人の「秘密」を知ってしまったとき、恍惚感と軽い興奮を覚えるのは人間の性だろう。そんな「秘密知りたい欲」を刺激された。ワイドショーが好きな人はハマること間違いなし。好きではない人も、自分に「興味本位」な面があることが改めて分かるだろう。ちなみに、私は後者である。

 一作目の『マスカレード・ホテル』は長編で、ある事件の捜査のためにフロントに化ける刑事と、ホテルウーマンの山岸尚美が協同して事件に当たる。二作目の『マスカレード。イブ』は連作で、山岸尚美がかかわるホテル小話が二つ、ホテルとは関係ない新人刑事の話が一つ、そしてそれらが交わる中編『マスカレード・イブ』が収められている。
 私は、長編である『マスカレード・ホテル』に軍配を上げたい。

 ちょうど来週、出張でホテルに泊まる。周囲の客がどんな仮面を被っているのか、またスタッフたちがそれにどう対応するのか、妄想してしまいそうだ。とはいえ、私が泊まるホテルはホテル・コルテシアとは比べるべくもない安ホテルなのだが…。





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2014年10月14日火曜日

【予想の回顧】京都大賞典、毎日王冠、オパールS、大原S、いちょうS(2014)

 月曜の京都は台風で中止。翌日の火曜に京都大賞典が行われた。
 トゥザワールドがスローで逃げ、2番手にタマモベストプレイ、その後ろにラストインパクトがつけた。本命の◎フーラブライドは中団から。
 そのままの隊列で直線へ。トゥザワールドが脱落し、タマモベストプレイラストインパクトの一騎打ちに。これをラストインパクトが制して重賞2勝目。
 トーセンラーが離れた3着に差してきただけで、後ろの馬は出番ナシ。馬券はもちろんハズレ。もう少し流れてほしかった。
 そつなく乗られた馬が1、2着を占めただけで、レースのレベルはちょっと疑問。GIには結びつかない結果だったように思う。

 日曜は東京で毎日王冠。
 ◎エアソミュールは中団の内を回って直線へ。前が開かず焦ったのは見ている私だけで、武豊騎手は慌てず騒がずジッと我慢。直線半ばで前が開くとズバッと伸びて見事に勝利。お見事! しかし、2着にサンレイレーザーが残ってしまい、馬券はハズレ…となるところだったが、ワイドで買っていたのが大正解で、1-3着のワイドを引っかけた。ディサイファが3着に残っていれば本線だったのだが、競馬は当たってなんぼ。文句は言うまい。

 京都のオパールSは◎フギンが3、4番手につけたが、差し馬の展開になってしまい、最下位でゴール。前に行った馬は総崩れの展開だったし、見限るにはまだ早そうだ。

 土曜は東京でいちょうS。
 ◎グァンチャーレは大きく出遅れて万事休す。最後は大外をいい脚で差してきただけにもったいなかった。次走、もう一度狙ってみたい。
 内をそつなく立ち回った馬が上位を占めた。レコードだったが、レースのレベルは微妙。

 京都メインは大原S。◎デウスウルトは後方から。外枠だったこともあるのか、思ったよりも後ろの位置取りになってしまった。京都の開幕週で、しかも内回りでは厳しいなあと思っていたら、4コーナー手前から抜群の手応えで進出すると、直線半ばで先頭に立ち、そのまま押し切った。強かった。馬券は単勝と、1-2着、1-3着のワイドを取った。3着に推奨穴馬のヒュウマが入ったため、けっこう浮いた。武豊騎手もありがとうございました。

 今週は5戦2勝。武豊さまさまの4日間だった。トータルもほぼトントン。来週からのGIに向けて、上昇気流に乗っていきたい。

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書評 ポー・ブロンソン、アシュリー・メリーマン『競争の科学―賢く戦い、結果を出す―』(実務教育出版)

「競争する気にならない」理由が分かるかも。努力しているのに業績の上がらない人、勉強しているのに成績の上がらない人はもちろん、「何だかイマイチ頑張れない」人にも読んでほしい一冊。


 3年前、同じ著者たちによる『間違いだらけの子育て ―子育ての常識を変える10の最新ルール―』という本を読んだ。本書は、著者らによるその次の作品。今回のテーマは「競争」だ。

 いまの時代、「競争」という言葉は、あまりよい意味で用いられないことが多い。「競争社会」と聞いて、よいイメージを持つ人はほとんどいないだろう。しかし著者らはこれに異を唱える。適切な競争によって、組織は効率を上げ、個人も成長していくのだと。

 基本的な構成は、前作と同じ。「競争」にかかわるテーマを12個選び、それぞれを科学的に、すなわち科学者たちの研究結果を基に解説していく。
 競争について、われわれが誤った先入観をたくさん持っていることがよく分かる。たとえば第8章「ポジティブとネガティブ」にはこんなことが書かれている。
 競争するとき、自分に自信を持った「ポジティブ」な心理状態と、自分の力を信じ切れない「ネガティブ」な心理状態のどちらが有利だろうか。直感的には前者が有利と感じるだろう。ポジティブな心理状態のほうが自分の力を十分に発揮できるのではないかと。しかし本書によると、多くの研究結果はこれとは反対の事実を示しているのだ。スポーツのトップ選手などは「少々イライラしている」ときのほうが好結果を出しているらしい。まあビックリ。
 こんな感じで、競争について一般的に受け入れられている先入観を覆すような研究結果が、たくさん報告される。「目から鱗」の新知見が盛りだくさんに載っている。

 日々の生活で競争にさらされない人はいないだろう。競争に関する最新知見を知り、自分を見つめ直せば、新たな展開が待っているに違いない。頑張っているのに業績の上がらない人、勉強しているのに成績の上がらない人はもちろん、「何だかイマイチ頑張れない」人にも読んでほしい一冊だ。

 ただし本書は、競争に勝つための方法論を述べた本ではない。競争に参加すること自体が、適切な競争環境に身を置くことが、組織や個人を活性化すると主張する。また、章ごとのつながりはあまりないため、本書全体として起承転結があるわけではない。だから
「結局、どうすればいいのよ」
と聞きたくなってしまうが、それは本書の役割ではない。本書を含めて、競争に関した知識をどう生かすかは、各個人が考えるべきなのだ。「勝利への道に王道なし」なのである。



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【読書メモ】東野圭吾『あなたが誰かを殺した』(講談社)

 加賀刑事シリーズ、最新第12作。娘が学校の図書館で借りてきてくれたので、文庫化前に読むことができた。  このところ、加賀の人生に絡んだ話が多かったが、シリーズの原点回帰。加賀は探偵役に徹して事件を推理する。いかにもミステリーなミステリー小説だ。  別荘地で起きた連続殺人事...