2012年4月15日日曜日

書評 綾辻行人『十角館の殺人』(講談社文庫)

『人形館の殺人』が面白かったので、綾辻さんのデビュー作にして「館」シリーズの第一作でもある本書を読んでみた。
 どうして、つい先日まで綾辻さんの作品を読んでいなかったのだろうか。昔ながらの、ミステリーらしいミステリーの世界を堪能した(あとがきを読んで知ったのだが、こういう作品を「本格ミステリー」というらしい)。ミステリーよりも「推理小説」という言葉を使いたくなる。

 舞台は大分県のとある島。その島を大学生のグループが訪れる。その島は無人島で、定期船はなく、指定の日に漁船が迎えに来るまでは孤島の状態である。その孤立した無人島で、一人ずつ学生が殺されていく。一人、また一人と人数が減っていき、高まる緊張、恐怖、焦燥感。生き残ったメンバーの中に犯人はいるのか、それとも…。
 というのが粗筋。そう、クリスティの名著『そして誰もいなくなった』を模した作品である。
「なんだ、二番煎じか」
と思う事なかれ。これが本元を超える面白さなのだ。動機や殺人計画の精巧さは、本家を上回っていると思う(舞台が現代日本であるという点もあるのだろうが)。

『人形館の殺人』の書評でも書いたのだが、私はホームズ、ルパン、ポアロというあたりから小説を読み始めたので、綾辻さんの作品を読むと
「やっぱ、ミステリーはこうでなくっちゃ」
と思ってしまう。こう書いてしまうと、ノスタルジーに浸っているだけと思われるかもしれないが、そうではない。「古き良き」だけではない魅力が、綾辻さんの作品にはある。抽象的な言い方になるが、現代風に洗練されているのだ。細部が緻密だという言い方もできるだろう。

 東野さんや宮部さんなどの作品からミステリーの世界に入った若い人たちは、この手のストーリーに対してどういう感想を持つのだろうか。
「現実離れしていて面白くない」
と感じるのか、それとも
「なにこれ、一気に読んじゃったよ」
となるのか。
 私はきっと後者だと思う。社会派ミステリー派の人にも、ぜひ一度は読んでみてほしい一作である。



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