前作のラストで、人類(ホモ・サピエンス)の起源が明らかになった(もちろんフィクションですが)。本作ではさらに深く、さらに長いスパンで人類、すなわちルナリアン(月面人)の歴史が語られる。そこには、当然、ガニメアン(太陽系で進化した、ヒトではない知的動物)が深くかかわっている。
タイトルを読めば分かるように、今回はガニメアンが主役であり、その主役は宇宙から突然やってくる。そこまでの展開を読んで、本作はサイエンス・フィクションという意味では、前作ほどサイエンスに重きがあるわけではなく、フィクションを楽しむ話なのかと、少し残念に思っていた。
ところが、この予想はよい意味で裏切られた。本作でも、サイエンスに裏打ちされたフィクションが展開される。たとえば、タイトルの通りガニメアンたちは優しいヤツらなのだが、その優しさの根拠が科学的な根拠から説明される。宇宙人とかサイボーグとか、そういう舞台を作って、そこで適当にフィクションを展開してSFと名乗っている作品とは、ひと味もふた味も違う。サイエンスを土台としたフィクション、すなわち本当のSFがここにはある。
また本作の柱の一つは、宇宙人であるガニメアンと人類との心暖まる交流の様子である。「E・T」や「未知との遭遇」など、宇宙人と人類との平和的なコミュニケーションに心を動かされた方は、この作品も是非読んでもらいたい。
最初にも述べたように、今回の話で、人類がどのような道筋で進化したか、ガニメアンと人類との関係はどのようなものであったかがさらに明らかになるのだが、まだ大きな謎が残されている。それは、第一作である『星を継ぐもの』の冒頭シーンだ。なぜあのとき、あの場所にガニメアンがいたのか。本作で明らかになった事実からは矛盾する話だ(という理解でいいんですよね。いささか自信がない…)。
次作でその謎が明らかになるのかならないのか。近いうちに読んで確かめたい。
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