本書は社会派小説の範疇に入るのだろうが、山崎豊子さんのように硬派ではなく、高村薫さんのように重くなく、独特の軽いタッチで重いテーマを語っていく。「社会派ライトノベル」とでもいえばいいのだろうか(もちろん「ライトノベル」というのは悪い意味ではない)。重いテーマを軽く読ませる、現代にマッチした作風なのだと思う。私も好きだ。
本書のテーマはズバリ、建設業界の「談合」。中堅ゼネコンの若手社員である平太が、現場から「業務部」へ異動になる。この業務部こそが、談合を取り仕切る部署なのだ。
突如、業務部へ来ることになり、最初は談合に加わることに戸惑いを覚える平太だが、徐々に談合に染まっていく。
一方、平太の彼女は銀行員。談合などなくすべきだという風土の業界だ。
談合を「是」とする側と「非」とする側、双方の視点から談合がリアルに描かれる。一方は「談合は社会秩序を守るための必要悪」、もう一方は「談合など、業界の悪い慣習にすぎない」という意見。
「そんなの後者が正しいに決まってるやろ」
とお考えの方が多いだろうが、本書を読み進めるにつれ、その確信は揺らいでいくに違いない。果たして談合は是なのか非なのか。結論を出すのは本書を読んでからでも遅くないだろう。
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