2014年11月10日月曜日

書評 落合博満『采配』(ダイヤモンド社)

オレ流采配は、実は普通の采配だった


 落合氏がドラゴンズの監督を退任直後に、8年間の監督生活を振り返りつつ、選手の育成法や常勝チームの作り方などについて語った本である。
 落合氏の指導法や采配は「オレ流」と呼ばれ、慣例にとらわれない斬新な発想によるものだと思われている。しかし本書を読むと、このオレ流が突飛な発想ではなく、むしろ当たり前のことのように思えてくる。
 川崎投手の開幕投手抜擢、完全試合目前の山井投手の交代劇などなど、オレ流の例はいくらでも出てくるが、それぞれにちゃんとした根拠があるのだ。本書でその根拠がていねいに説明されているので
「なるほどなあ」
と感じると同時に
「オレ流って、むしろ普通じゃん」
と思えてしまうのだ。

 オレ流の人の育て方の極意は
「自分で考えることのできる選手にする」
ということに尽きる。当たり前といえば当たり前のことなのだが、かといってなかなかできることではない。指導者はえてして、自分の成功手法を持ち出して、選手に手をさしのべてしまいがちだ。人を育てる(率いる)立場の人には思い当たる節があるだろう。
 しかし落合氏は「自分で考えさせる」ことを徹底する。そのため「冷たい」という印象を持たれてしまうのだろう。だがこれは反対で、手取り足取り指導することはむしろスポイルであり、突き放して自分で考えさせることが本当の愛情なのだということがよく分かる。
 この指導法は、最近読んだ森繁和氏の『参謀』に書かれていることと全く同じである。監督である落合氏と、その腹心である森氏の考え方に全くズレがないのだ。こういう組織は強い。部長と課長の考え方が違う組織などは、歯が立たないだろう。8年間で4回優勝という圧倒的な実績が、その証拠である。

 しかし私が最も印象に残ったのは、指導法や采配ではなく、最後の節に書かれていることだった。
「仕事の成果と幸せにに生きることは、別軸で考える」
というタイトルの最終節が心に響いた。
「自分の人生、自分で責任を持って、自分で考えろよ」
と言われたような気がした。



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