2015年8月4日火曜日

【書評】鏑木蓮『白砂』(双葉文庫)

動機をていねいに描いたミステリー。納得の読後感


 ある人物が、ある場所で、ある人物の骨をまくシーンから始まる。タイトルの『白砂』とは骨の粉のことなのだ。
 ストーリーの鍵を握るのは「骨」。とある会社経営者の遺骨が盗まれる。誰が、何の目的で骨を盗んだのか。一方、ある少女が殺害される。その事件を追うのが目黒警部。彼の捜査方針は「徹底的に動機を追う」というもの。これが本作のキモである。
 目黒は、犯人はもちろん、被害者、周囲の人間の心の動きを追求する。状況証拠を積み上げるだけでなく、事件の根底を明らかにしようとするのだ。これが実にていねいに、自然な形で語られる。密室の謎や完全犯罪もよいが、動機の解明もミステリーの醍醐味だ。気持ちのよい読後感だった。

 いい味を出しているのが、目黒の部下の山名と、目黒の娘の愛子。二人とも、若者特有の軽薄さを十分に持っているのだが、それが全く嫌味に感じない。むしろ応援したくなるような若者たちなのだ。こういうキャラクターを描くのは簡単ではないだろう。鏑木氏の若者に対する温かい思いが、こういう形で表現されているのだろう。




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