「嫌外国、好日本」的な右寄りの本かと思っていたのだが、そうではなかった
『住んでみたドイツ8勝2敗で日本の勝ち』に続く「日本の勝ち」シリーズ第2弾。第1弾は読んでいないのだが、ベストセラーとなった理由がよく分かった。
第1章から順に、治安、リズム感、風景、動物虐待、公共工事、食品偽装、宗教事情、歴史認識について、日本とヨーロッパ(主にドイツ)を比較する。川口氏の巧みな筆捌きと、ドイツはシュトゥットガルト在住者ならではのリアルな知識や経験とにより
「なるほど、日本の勝ちだなあ」
と思わせられる。そう、日本はとてもよい国なのだ。
最初は、近ごろ流行りの「嫌外国、好日本」的な右寄りの本かと思っていたのだが、そうではなかった。それは、川口氏が「嫌独、嫌欧州」ではないからだろう。「9勝1敗」などと言いながら、現在もドイツに住んでいるように、ドイツやヨーロッパに対する愛情が垣間見えるのだ。だから読んでいてイヤな気分にならない。
また、ドイツやヨーロッパの現状や歴史に対する見識も高く、それも気持ちよく読める理由の一つだろう。
後半の章ではオペラ、同性愛者、移民・難民、EUなどをテーマにヨーロッパを考察していく。とくに移民・難民については、まるで予言のように現在の状況を予測している。識者には、いずれこうなることは分かっていたのかもしれない。
一部、川口氏の個人的な見解に過ぎるのでは…という記述も見られたが、個人が書いたものなのだからそれも当然ということにしておきたい。楽しく読めた。
また(月並みな褒め言葉になってしまうが)文章がとても上手い。分かりやすい文章で、ユーモアを絡めながら、理路整然と語られる。知識がいくら豊富でも、それを伝える能力はまた別なのだが、川口氏はその両方をもっている。これからもヒットを飛ばしていく書き手に違いない。
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