2011年11月9日水曜日

書評 東野圭吾『ダイイング・アイ』(光文社文庫)

 これも母から借りた東野本(何冊借りてんねん)。『天使の耳』と同様、交通事故を題材にしたストーリーである。
 『ダイイング・アイ』は長編で、『天使の耳』は短編集という違いはあるものの、通底する主張は同じである。それは、交通事故の不毛さ、やるせなさである。

 ある女性が交通事故で亡くなるシーンから話は始まる(のっけからかなりグロい描写あるので、そういうのが苦手な方はさっさと読み進めることをお勧めする)。
 主人公は、とあるバーテンダー。暴漢に襲われ、記憶の一部をなくしてしまう。襲った暴漢は冒頭で亡くなった女性の夫。そして、襲われたバーテンダーはその女性を死なせた男、すなわち交通事故の加害者だ。
 暴漢に襲われたことにより、事故の記憶をなくしてしまったバーテン。何だか釈然としない気持ちから、事故の記憶を取り戻そうと調査を始める。そして、亡くなった女性の亡霊が現れ、事故の全貌が徐々に明らかになり…というのがストーリーの概要である。

 しかし、事故の部分だけ都合良く記憶が消えてしまったり、催眠術が話のカギを握っていたり、死者の怨念が出てきたりと、正直、ミステリーとしてはあまり入り込めなかった。

 とはいえ、東野さんの交通事故に対する思いは伝わってくる。便利さに引きずられ、車の怖さや交通事故の悲惨さから目を背けてはいないだろうか。そういうメッセージをこの小説から感じた。東野さんの、そういう思いを受け止める小説ということにしておきたい…。

 東野さんはきっと「車がもっと減ればいいんや。そうすれば事故も減る」と言いたいのだと勝手に類推したい。東野さんのように影響力が大きい人が「車を減らせ」などと公言するといろいろ問題があるので、なかなかはっきりとは言いにくいのだろう(ホンマか)。

 ということで、私が勝手に代弁しておく。
 車をもっと減らして、事故を減らすべきだ。方法は簡単。車両税やガソリン税をドンと値上げすればよい。車検にドカンと税金をかけるのもいいかもしれない。
「でも、車がないと生活できない」
という声が聞こえてきそうだ。しかし、本当だろうか。自動車産業に洗脳されていませんか?



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