2011年11月29日火曜日

書評 井沢元彦『決定版 世界の[宗教と戦争]講座』(徳間文庫)

「あなたは何教の信者ですか?」と聞かれたとき、あなたはどう答えるだろうか。「無宗教です」という答えは、真実なのだろうか?

 本書は、2003年に出版された『世界の宗教と戦争講座』の改訂版。前著も読んだのだが、改訂版が出たのを機に、そちらを読んでみることにした。
 外国・外国人とかかわりのある仕事をしている人には必読の本だ。

 現在の世界で影響力を持つユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教、儒教を分かりやすく紐解く。それに加え、日本人の信じている宗教(日本教とでも言えばよいのだろうか)を解説。
 なぜ外国人とは話がかみ合わないのか、誤解を生じるのか。「文化の違い」のひと言で片付けられている考え方の違いを、宗教という視点から説いていく。

 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という一連の宗教の解説に多くのページが割かれている。それぞれの宗教の特徴とともに、それらの関係が書かれており、どういう経緯で現在の戦争や紛争や対立が生じているのかが手に取るように分かる。
 現在の世界情勢を俯瞰するには必須の知識・視点だろう。

 さらに、われわれ日本人の宗教観も上手くまとめられている。
「私は無宗教です」
と思っている人には、是非読んでみてほしい。ほとんどの人は、決して自分が無宗教ではないことが理解でき、さまざまな宗教を信じている人への理解も深まるに違いない。

 私は、中学・高校とカトリックの学校に通っていたので、聖書を読んだこともあれば、ミサに列席したこともある。キリスト教やユダヤ教にも、それなりに通じていると思っていたわけだ。しかし本書を読んで、改めて日本人と西欧の人たちのとの根本的な考え方の違いを理解した。

 一般的な日本人は、正月には初詣に行き、七五三を祝い(神道)、バレンタインデーやクリスマスを楽しみ(キリスト教)、葬式はお寺で行い、お墓を作る(仏教)。挙げ句の果てに
「あなたは何教を信じているのか?」
と聞かれれば
「無宗教です」
などと答えたりする。
 外国人から「キモッ」と思われても仕方ないのかもしれない。

 そう思われないためには、自らの宗教観を顧み、キリスト教を初めとする外国の宗教への理解を深める必要があるだろう。
 本書は、そのための格好の入門書である。



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