大科学者のマイケル・ファラデーが、ロウソクを題材にして子どもたちに行った実験講座をまとめたのが本書である。
ロウソク1本から、ここまでさまざまなことが明らかになるのか。しかも、子どもたちにも分かるかたちで。私は、研究者としての能力と、教育者としての能力は別物だと考えているが、このファラデーさんには、天は二物を与えたらしい。
ロウソクは、実に不思議な物であることが本書を読むとよく分かる。ロウソクの役割は照明である。ガス灯や電気が発明されるまでは、人々はロウソクの明かりを頼りに夜を過ごしていた。どうして、ロウソクが使われていたのだろうか。
普通、物が燃えると燃えかすが残るのに、ロウソクは残らない。炎は出るが煙は出ない。ロウソクから煙がもうもうと出てしまっては、室内照明の役割を果たせるはずがない。身近にあるので普段は意識しないが、ロウソクは照明として必要な特徴をいくつも持っているのだ。
本書では、このようなロウソクの特徴を順々に説明していく。その過程で、炎とは何なのか、ロウソクが燃えるとはどういう化学反応なのか、ロウソクが燃えた後に何ができるのか、ロウソクはどういう元素からできているか、などが明らかになる。そして最後は、ロウソクの燃焼と、われわれ人間の代謝が同じ現象であることまで説明してしまう。
ロウソク1本から、こんなにたくさんのことを分かりやすく、しかも実験的に説明していくファラデーさんの教育力には脱帽だ。子どもたちの様子はまったく書かれていないが、目をキラキラさせながら聞き入る様子が想像できる。
ただし本書(角川文庫版)は、訳文が古いということもあるのだろうが、お世辞にも読みやすいとは言えない。
「~なのであります」
などの仰々しい訳文が鼻につく。
また、1800年代に書かれたものだから仕方がないが、図が少ない。そのため、ファラデーさんがどのような実験をしたのか、少し分かりづらいところがある。
分かりやすい新訳と、図を補完した新版が出ればうれしい。
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