2016年12月21日水曜日

【書評】伊坂幸太郎『重力ピエロ』(新潮文庫)

苦くて温かいラストシーン


 レイプによって生を受けた男子とその兄の物語。この上なく重い設定だ。
 その重い設定を舞台に、父を異にする兄弟が軽妙なリズムで絡み合う。ジャズのセッションを聴いているかのような軽やかなコラボと、その背景にある重たい空気。華やかなジャズの舞台の背後で、悪魔がニタニタと笑っているシーンを想像してしまった。
 あまりにも設定が重いためなかなか入り込めなかったが、後半は一気呵成。苦くて温かいラストシーンに心を揺さぶられた。

《あらすじ》
 レイプによって生を受けた男子とその兄。その周辺で、落書きと放火が起きる。誰が、何のためにやっているのか。その謎を探る、半分しか血のつながらない兄弟と、その父。
 落書きと放火には、あるメッセージが隠されていることが分かる。すべての謎が解けたとき、浮かび上がった犯人は。



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