2019年4月27日土曜日

【読書メモ】森絵都『みかづき』(集英社文庫)

 私塾を営む夫婦の人生を、約50年間に渡って追うことにより、戦後教育の変遷をたどる。公教育とは、私教育とは、そしてそもそも教育とは何なのか。「教育改革」が何度もあったが、その波に翻弄されるのは、いつも子どもたちだ。
 よりよい教育とは何か、より正しい教育とは何か。その問いに答えはあるのだろうか。

 これが縦糸とするなら、横糸は家族の物語だ。夫婦とその親、子、孫の四世代にわたる絆が描かれる。全8章からなり、最初の4章は夫の視点から、続く3章は妻の視点から語られる。激しい気性の妻が、いつの間にやら丸くなっていくのに最初は拍子抜けしたが、だんだん「それもよかんべ」という気持ちになってくる。
 最後の第8章は、孫が一人称を務める。最初は戸惑ったが、それもつかの間。どんどん引き込まれ、あっという間にラストへ。頼りなかった孫が、しっかり物語を締めくくるのがほほえましい。

 泣けた。じわじわ溜まる涙あり、不意を突かれて急に流れるありで、涙腺は緩みっぱなし。心の琴線に触れるとは、こういうことを言うのかもしれない。

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