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2022年12月4日日曜日

【読書メモ】ポール・ベンジャミン『スクイズ・プレー』(新潮文庫)

 ポール・オースターが、ブレイクする以前に別名義で書いていた、幻のデビュー作。オースターもベンジャミンもよく知らないのだが(オイオイ)、野球ハードボイルドなら読んでみようと手に取った。

 主人公の探偵が、脅しなどに決して屈することなく、身の危険を顧みず謎を追う。半日に1回は絶体絶命のピンチが訪れるが、銃弾が脳天をかすめて何とか切り抜け、傷だらけで帰還。ぼろアパートで美女としけ込むと、休む間もなく次の標的へ。
 最後のオチはなんとなく読めたが、しっかり話も閉じて、探偵はまた次の旅に出る。古き良き、ザ・ハードボイルド小説だ。

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2022年11月22日火曜日

【読書メモ】今村翔吾『八本目の槍』(新潮文庫)

 直木賞をとった今村氏は、なんとわが滋賀県在住の作家というではないか。しかも、私と同じくネイティブの滋賀県民ではなく、関西の他地域からの移住組だという。さっそく読んでみようと選んだのが本作品だった。

 賤ヶ岳の戦いで活躍した秀吉の七人の配下が「賤ヶ岳の七本槍」だ。本書は、その七本には漏れた石田三成を「八本目の槍」として描いた作品だ。
 全7章からなり、「七本槍」が一人ずつ登場する。秀吉の部下になった経緯から、賤ヶ岳の戦いなどを経て、大坂冬の陣・夏の陣に至るまでがそれぞれ語られる。なので、朝鮮出兵や関ヶ原の戦いなど、同じ場面が複数の章に出てくる。一人称が異なると、印象も変わるのが面白い。

 石田三成が中心に描かれる章はない。にもかかわらず、本書の主人公は三成なのだ。その存在感はまさに主役。見事な光の当て方だ。
 また、七本槍もそれぞれ個性的でキャラが立っている。連作集的な作りになっており、脇役陣が複数の章にまたがって登場するのも見事。今村人気も、なるほど納得だ。

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2022年11月19日土曜日

【読書メモ】日本お笑い数学協会『笑う数学』(KADOKAWA)

 クスッと笑える数学(算数)の小ネタ集。なるほどと思えるものから、ちょっと無理気味(笑)のものまで、100のネタを集めた。数学や算数を教える人にはもちろん、飲み会の話題にもよさそうだ(シチュエーションを選びそうだが)。
 著者陣たちの、数学への愛が伝わってくる。「ちょっと好き放題に書きすぎやろ」と突っ込みたくなった。

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2022年10月19日水曜日

【読書メモ】西加奈子『あおい』(小学館文庫)

 表題作を含む三つの作品からなる中編集。三話とも、若者の人間関係が、一人称の視点から描かれている。生々しいけれども瑞々しいような、青春時代の終盤の感覚がよみがえる。「大人になる」過程が見えてくるようだ。
 随所に出てくる大阪弁も気持ちがよい。大阪弁を活字にする技術の高さは、史上ナンバーワンだ(当社比)。

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2022年9月18日日曜日

【読書メモ】三浦しをん・あさのあつこ・近藤史恵『シティ・マラソンズ』(文春文庫)

 2013年に出版された本だが、いままでその存在は知らなかった。この本を教えてくれたのは、田中希実選手。人生を変えた一冊に本書をあげていたのだ。購入したら、帯が田中選手だった。出版社も、田中選手の「推し」に答えて増刷したのだろう。
 しかし走るのはもちろん、本職の本の目利きでも田中選手にかなわないとは、なんともトホホである…。

 日本を代表する3人の女流作家が、フルマラソンを走る市民ランナーを描いた短編集。舞台はニューヨーク、東京、パリで、主人公は男性ランナー、男性サポーター、女性ランナーと、三人三様。各話とも、それぞれの人生とマラソン大会が素敵にシンクロしているのがいい感じ。人生もフルマラソンも、よいことがあれば悪いこともあるよねえ。
 東京はもちろんだが、ニューヨークもパリも走ってみたいなあ。ただでさえそんな余裕はないのに、この円安ではますます厳しいけど…。

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2022年9月1日木曜日

【読書メモ】東野圭吾『希望の糸』(講談社文庫)

 加賀刑事シリーズ最新作。
 前作の『祈りの幕が下りる時』の結末を受け、警視庁の本庁に戻って、結婚もした加賀が、新たな境地を切り開く…ような話かと思いきや、ちょっと変化球。今回の主人公は加賀の従兄弟の松宮刑事だ。

 ある殺人事件の捜査と、松宮の出自の解明が、並行して進んでいく。この二つは全く独立の出来事なのだが、「親子」というキーワードで見事に結びついている。抜群の構想力だ。
 あっと驚くどんでん返しこそないものの、物語はきちんと閉じて、タイトルの意味も明らかになる。そう、希望の糸が繋がっていれば、それでよいのだ。

 変化球だろうが、直球だろうが、グイグイ読ませるところはさすが東野小説。今回もあっという間に読み終えた。
 ただ、最近のペースを考えると、加賀刑事シリーズもあと何作読めるのか分からない。次回は直球で加賀自身の物語を進めてほしいものだ。

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2022年8月19日金曜日

【読書メモ】佐々木一郎『関取になれなかった男たち』(ベースボールマガジン社)

 幕下筆頭まで上り詰めながら、関取になれなかった力士6人を取り上げ、その相撲人生と現在の様子などを紹介したドキュメンタリー。

 相撲の世界では、十両に上がると関取と呼ばれ、給与も含めてそれ以下の力士とは雲泥の差がつく。この壁を、あと少しのところで乗り越えられなかった6人の人生が、丹念な取材をもとに語られる。
 「もう一番勝っていれば」「上の力士がもう一つ負けていれば」「いつも通りの相撲がとれていれば」。たらればを言えば切りがないが、何度も何度もたらればを自問自答したに違いない。人生の岐路がこれだけはっきり見えるのが、プロの世界の厳しいところだろう。
 しかし、6人ともみんな「残念ではあるけれど、仕方ない」という感じで、悔やんでも悔やみきれないほどには思い詰めたところがないのが印象的だった。

 もう一つ印象に残ったのは、怪我との戦い。怪我に泣かされる力士がいかに多いかがよく分かった。できるだけ怪我を避けるトレーニング法がもっと追求されてもよいと思うのだが、特に相撲ではなかなかそうはいかないのかなあ。逆に言うと、怪我が少なくなるような合理的なトレーニングを実践した力士が上位に行けるのかもしれない。

 待遇は天と地ほど変わるが、実力がそれほど違うわけではない幕下上位と十両。そのせめぎ合いが見られる幕下上位の取り組みが最も面白いと言われるのも納得だ。私も含めて、5時過ぎから幕内上位の取り組みしか見ない人がほとんどだろうが、早い時間の取り組みも見たくなった。

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2022年8月11日木曜日

【読書メモ】桜井美奈『殺した夫が帰ってきました』(小学館文庫)

 タイトルそのまま、殺したはずの暴力夫が帰ってきた。記憶をなくし、別人のように優しくなった夫。信じてよいのか…。
 奇妙な共同生活が続くうちに、徐々に大きくなる違和感。何かがおかしい。

 並行して語られるのが、主人公(夫を殺した妻)の過去。
 違和感がマックスに達し、主人公の過去と現在がつながるとき、すべてが明らかになる。

 ちょっと都合のよい展開が多いが、ページをめくる手を止めさせないドキドキ感はなかなかのもの。一気読み間違いなしのスリルサスペンス。

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2022年8月7日日曜日

【読書メモ】今田寛『ことわざから出会う心理学』(ミネルヴァ書房)

 書き方はやさしいが、中身はちょっと硬派な心理学の入門書。近年の心理学の研究で明らかにされた成果が、八つ紹介されている。血液型占いの真偽、人間は生まれ(親からの遺伝)か育ち(周囲の人間)のどちらの影響を大きく受けるのか、日本人が「出る杭」になるのを避けるのはなぜかなど、興味深いテーマが心理学の立場から説明される。

 心理学というと、フロイトの夢判断みたいなのを想像しがちだが、現代の心理学は、生物学や脳科学が取り入れられ、データの分析には統計学が必須であり、理系の学問に近づきつつある。
 特に行動遺伝学という双生児を用いた研究の成果には目を見張るものがあり、なんとなく常識とされていたことが覆ることもあるようだ。中でも「生まれか(遺伝)、育ちか(環境)」に関する知見に行動遺伝学が与えた影響は大きく、(ざっくり言えば)知能は遺伝の割合がかなり大きく、性格(社会的行動)は家族外での人間関係がそのほとんどを決定するそうだ。

 心理学の分野を長年、牽引してきた今田氏が、豊富な文献を参照しつつ、エビデンスベーストに「人間の性質」を解説してくれた。一般市民がちょっと詳しく心理学を覗いてみたいときには最適の一冊。

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2022年8月5日金曜日

【読書メモ】道尾秀介『カエルの小指』(講談社文庫)

「あいつらが帰ってきた」
 続編にありがちなフレーズだが、本書を一言で表すならこれしかなかろう。前作『カラスの親指』で大暴れした4人に、その息子と新たな少女が加わり、総勢6名で大ペテンを仕掛ける。
 誰が誰を騙していていて、どこからが本当でどこからが茶番なのか、二転三転どころか、四転五転。ようやく「なるほどねえ」とオチが見えたところで、すべてがひっくり返って幕を閉じる。またも道尾氏にしてやられた。
 いつも通り、やめられない止まらない、道尾小説。寝不足のときに読み始めないように注意。

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2022年7月9日土曜日

【読書メモ】夏川草介『神様のカルテ』(小学館文庫)

 大ヒットして映画化もされた、夏川氏のデビュー作。
 高度な最先端医療を扱う大病院ではなく「おらが町」の病院で、患者ひとり一人と向き合い、ときにはその最期を看取る。ろくに休みも取らず「患者ファースト」の生活を送る医師を描いた医療ドラマだ。

 「医療とは技術ではなく仁術である」を体現するような医師の物語は、昔から定番のネタだ。「こんなお医者さんにいてほしい、診てもらいたい」という庶民の思いは、昔も今も同じということなのだろう。医師がちょっと変人なのもお約束だ(笑)。
 シリーズ化も納得の、心暖まる良作。夏川氏の読書愛がにじみ出ているのもグー。

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2022年6月25日土曜日

【読書メモ】伊与原新『月まで三キロ』(新潮社文庫)

 表題作を含む8話が収められた短編集。いずれも科学を絡めたストーリーになっているのが特徴だ。その科学も、数学や物理学などといった「いかにも」なものではなく、ちょっとひねった分野なのが一ひねりきいている。
 たとえば天文学、気象学、地層学(?)など、科学の中でもさらになじみのない分野が物語を彩る。それが自然な形で人と人とを結びつけ、心の架け橋となるところがニクい。普段は身近にない科学が、無理なく物語に溶け込んでいるのだ。うーん、うまい。
 次は長編を読んでみようかな。

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2022年6月23日木曜日

【読書メモ】瀬尾まい子『傑作はまだ』(文春文庫)

 一度も会ったことのない息子が、25歳になっていきなり訪ねてきて、共同生活が始まる。現実にはあり得ないだろうが、そのあり得ない設定の下で、人情の機微をはんなりと描いていくのが瀬尾小説だ。
 現実にあり得るとかあり得ないとか、そんなのはどちらでもよい。父と息子のやりとりをしみじみと楽しめれば、それでよいのだ。今回も、ほのぼのと心が温まった。

 最後の予定調和はいらない気もしたけど、オチとして必要だったのかな。映画化するなら、主演は岸谷五朗でどうだろうか。

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2022年6月1日水曜日

【読書メモ】古内一絵『風の向こうへ駆け抜けろ2 蒼のファンファーレ』(小学館文庫)

 女性騎手の芦原瑞穂が主人公の『風の向こうへ駆け抜けろ』シリーズ第2弾。どん底の競馬場の、底辺の厩舎に所属する瑞穂が、仲間の調教師や厩務員とともに、中央のエリートや良血馬に立ち向かうという、昭和の香りのする青春小説だ。
 シリーズ二作目にして、瑞穂の恋や騎手の競争相手や、良血のライバル馬が登場。さらには、実在の人物がモデルのレジェンド騎手や風水師馬主も現れ、次作への布石も万全(笑)。NHKでのドラマ化も追い風に、人気シリーズとなっていくのだろう。

 競馬歴約30年の馬券オヤジに言わせると「それ、ちょっとどうなん?」という部分が見られ、特に馬を擬人化しすぎな面がある気もするが、そこは小説だということにしておきたい。
 理不尽な妨害や、仲間たちへの不信感を乗り越え、最後は一致団結して突き進む。なんとも分かりやすい展開だが、それがいい。単純で、元気の出る小説だ。

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2022年5月28日土曜日

【読書メモ】西加奈子『サラバ! 上・中・下』(小学館文庫)

 1970年代生まれの男性の半生を描いた大作。主人公には(性別は違うが)西氏自身が色濃く投影されていて、半自伝的フィクションとでも言える作品となっている。

 強烈に押しの強い母と姉の影響を避けるように、ヒラリヒラリと身をかわして順調に大人になり、母や姉と離れて人生を構築することに成功した主人公。順風満帆と思われたが、おっさんになったとき、思わぬ展開が待っていた。
 「人生って何やねん」という問いに、西氏が渾身の力で回答した力作だ。

 主人公が私とほぼ同年代で、しかも西作品にお約束の大阪弁が満載。親近感を持つと同時に、深く身に刺さる読後感だった。
 その後、主人公はどういう人生を送り、中年にさしかかっているのだろうか。そんなことが気になった。

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2022年5月27日金曜日

【読書メモ】津本陽『小説 渋沢栄一 上・下』(幻冬舎文庫)

 大河ドラマ『青天を衝け』見たついでに、小説も読んでみた。大河ドラマの背景を補完してくれるような内容になっている。
 養蚕農家の家に生まれ、江戸に出て大実業家として歴史に名を残すまでの一生が描かれる。江戸、明治、大正、昭和と時代が変わるなかで、いまの日本の礎を作った人物の一人だと言うことがよく分かった。
 いったい、いくつの会社や事業にかかわったのだろうか。噂には聞いていたが、とにかくエネルギッシュな人だったようだ。いまの時代に生まれていたら、ここまでの大活躍はできなかったかもしれない。社会が大きく動いた時代にこの人物がいたことによる相乗効果が、これだけの結果を生んだのだろう。

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2022年5月6日金曜日

【読書メモ】東野圭吾『マスカレードゲーム』(集英社)

 珍しく、中3の娘から
「なあなあ、お父さん」
と声をかけてきた。何かと思ったら
「マスカレードシリーズの新しいのが出るらしいで」
だそうだ。要するに「買ってよ」ということらしい(笑)。
 しかし、わが家には「文庫が出るまで待つべし」という家訓があるため
「買うのは文庫が出てからやで。2年後くらいかなあ」
という返事に娘はしょんぼり…。
 そんなところに、おばあちゃん(私の母)が娘を買い物に誘ってくれた。娘は「これはチャンス!」と、本書を買ってもらったのだった。おばあちゃん、いつもありがとうございます。娘がおばあちゃんに買ってもらった本をさっそく読む父親も、何だかなあやけど…。

 閑話休題。
 マスカレードシリーズ第4弾。刑事の新田とホテルウーマンの山岸のコンビが、今回もホテル内での殺人事件を防ぐべく、大奮闘。殺人を企てる犯人だけでなく、そのターゲットもなかなか明らかにならないのが、本シリーズのキモだ。いったい、誰が誰を殺そうとしているのか。
 最後はしっかり話しも閉じ、満足の読後感。揚げ足をとるなら、舞台がホテルでなくてもよかったような、ということくらいか。

 本作は、間違いなくキムタク主演で映画化されるだろう。前作は娘と見に行ったが、次は一緒に行ってくれるだろうか…。

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2022年4月7日木曜日

【読書メモ】河森直紀『ピーキングのためのテーパリング』(ナップ)

 順番が違うやろ。いや、こっちの話なんですが…。
 私が本書を読んだのは、フルマラソンの大会で失速した後。テーパリングの失敗が撃沈の原因だったように思ったので、以前から気になっていた本書を読んだのだが…大会の前に読んどけばよかった。マジ後悔。

 まず私が勘違いしていたのは、テーパリングという言葉の意味。「そぎ落として、シャープにしていく」すなわち「研ぎ澄ませる」という意味だと思っていたら、そうではなく、単に「減らす」という意味なのだそうだ。
 だからタイトルの『ピーキングのためのテーパリング』とは「研ぎ澄ませるための手段として、練習量を減らす」という意味なのだ。なるほど。

 本書は3章で構成されていて、これがたいへんわかりやすい。まず1章は「What」すなわち「テーパリングとはなんぞや」から始まり、2章で「Why」すなわち「なぜテーパリングするとパフォーマンスがアップするのか」が説明され、最後の3章で「How」すなわち「じゃあ、どのようにテーパリングを実施すればよいか」が語られる。
 決して「それなら、結論の3章だけを読めばいいやん」と思うことなかれ。1章と2章を理解せずに3章だけを読んでも、テーパリングがうまくできるようにはならない。

 私はいままで、マラソン練習本などに書かれているメニューを参考にテーパリングをやっていた。4週前に30 km走をやって、3週前からは量を減らしつつスピード練は継続して、2週前に20 km走、1週前に10 km走、てな感じだ。
 3週前くらいから徐々に距離を減らせばいいという曖昧な感覚で、練習本に書かれているメニューをアレンジしただけでは、効果も低かっただろうし、何より応用が利かない。
 その弱点が露呈したのが今回だ。大阪マラソンが中止になり、本番が急遽3週間ずれたため、テーパリングに入りかけたところで、もう一度やり直すことになった。このようなときに、テーパリングをどうやり直せばよいのか、本書を読んでいれば、もう少しうまく対応できたような気がしてならない。もっと早くに読んでおけばよかった…。

 次回からは根拠をもって、テーパリング時のメニューを組むことができるだろう。だからといってうまくいくとは限らないが
「なんとなく、うまくいった(いかなかった)」
ではなく、次につなげることができるはずだ。






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2022年3月31日木曜日

【読書メモ】梨木香歩『鳥と雲と薬草袋/風と双眼鏡、膝掛け毛布』(新潮文庫)

 「土地の名前」に関するエッセイ集。全国各地の、主に古い土地について、その名の由来や様子などを紹介する。梨木氏の土地名に関する知識は膨大で、「この説にはしっくりくる」とか「由来は諸説あるが、どれもとってつけたもののように感じる」などの感覚にも説得力がある。
 梨木氏の言葉や歴史に対する愛が感じられる、ほっこりする一冊だった。

 梨木氏の代表作である『家守綺譚』と『冬虫夏草』の舞台が滋賀県だということもあり、本書には至る所にわが滋賀県が登場する。
 梨木氏はしばらく滋賀に住んでいたこともあるそうだ。当時は滋賀の土地を回り、さまざまなことを調べ、土地の人と交流したのだろう。滋賀は奈良よりも前に都のあったところだから古い地名も多く、梨木氏の土地名欲も満たされたに違いない(笑)。
 滋賀だけで一冊書いてくれないかなあ。






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2022年3月4日金曜日

【読書メモ】横山秀夫『ノースライト』(新潮文庫)

 家を建てるときは、南からの日を取り入れるように設計するのが普通である。そこをあえて、北からの日を取り入れる手法がある。その「北からの日」をタイトルにした小説だ。
 燦々と降り注ぐのではなく、柔らかくほんのりと部屋を照らすのがノースライトだ。小説の雰囲気と、よくマッチしている。ノースライトのように、静かに、粛々と話が進んでいく。

 主人公は青瀬という建築家。
 ノースライトを取り入れた、青瀬の渾身の力作の家に住んでいるはずの依頼主が蒸発した。依頼主はいったいどこへ行ったのか。それとも、この家の建築依頼そのものが茶番だったのか。
 依頼主の行方に加え、家に残された椅子の謎、青瀬の属する建築事務所の挑戦、離婚した家族との関係などが渾然となり、まるでノースライトのようにほんのりと青瀬の人生を照らし出す。
 静かだが、しかし熱いストーリーだ。読み応えたっぷり。

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【お父さんの週末料理】2024年4月26~29日<small>~GWのから揚げ大会~</small>

 わが家では土曜、日曜の晩ご飯は主に父(私のこと)が担当している、そのメニューを絶賛(?)公開中、  家族構成は父(アラフィフ)、母(年齢非公表)、娘(高2)、息子(中2)の4人、  GW前半の3連休。金曜に休みを取ったので4日分の料理記録。  4月26日(金)   昼...