2015年12月1日火曜日

【書評】黒木登志夫『iPS細胞─不可能を可能にした細胞─』(中公新書)

ちょっと進んで理解したい人のために


 iPS細胞とはどんな細胞なのか、何がすごいのか、どうやって作るのか、どんな病気への応用が進んでいるのか、などなど、iPS細胞についてのあれやこれやを科学的に正確に、かつ平易に語った本。
 山中氏をはじめ、iPS細胞の発展にかかわった科学者たちの奮闘ぶりも書かれてるが、そこに深入りしすぎることなく、iPS細胞の科学的側面が丹念に解説されている。
「iPS細胞って結局、どういうものなの?」
が知りたい人にはうってつけの本だと言えよう。

 iPS細胞ばかりが注目されているが、そのすごさの本質は「幹細胞」であることであり、そういう意味ではES細胞や受精卵と同じである。その幹細胞を「普通の細胞」から作れることがiPS細胞のキモであることがよく分かる。
 異例の早さでノーベル賞を取ったことにも納得だ。
 一部、生物学の基本的な知識が必要な箇所もあるが、そこはさらっと読めば問題ない。生物学の素人にも分かりやすく書かれた良書である。

 これからも、iPS細胞にかかわるさまざまな新知見・新技術が出てきて、ニュースになるだろう。本書を読んでおけば、そういう報道を見たときに
「おお、次はこれができるようになったか」
「ああ、この科学者がやり遂げたか」
「ええっ、ここまで来たのか」
と、一歩進んだ理解ができるに違いない。

 現在、初めての臨床応用となる加齢黄斑変性治療が進行中である。その先にはどんな未来が待っているのか。本書を読めば、よりワクワクできるだろう。




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