2015年5月20日水曜日

【書評】東野圭吾『11文字の殺人』(光文社文庫)

あの人の書いた「解説」が秀逸。東野マニアだったのね


 1987年(文庫版は1990年)刊行の、東野氏の初期の作品。
 たしかに、いまの東野作品ほど完成度は高くないかもしれない。少し都合のよい展開が多いように感じるし、得意の大どんでん返しもなく、中どんでん返し程度にとどまっている。
 しかし、次々とページをめくらせる筆力は、むしろいまよりもパワフルだ。謎が謎を呼び、絶妙のタイミングで起こる新たな殺人。あっという間に読み終えてしまった。

 さらに文庫版では、読後に嬉しいオマケが堪能できる。宮部みゆき氏が解説を書いているのだが、これが秀逸。東野作品を隅々まで読み込んでいることがよく分かる。ほとんど東野マニアのレベルだ。宮部氏の解説に比べると、私の書評など、恥ずかしくて公表するのをやめようかという気になってしまう。
 一粒で二度おいしい。どこかで聞いた台詞だが、読むならぜひ文庫版をお薦めしたい。

【あらすじ】
 主人公の女性推理作家の恋人が殺されるところから話がスタート。その謎を探っていく過程で、先回りをするように関係者が一人、また一人と殺害される。そして徐々に明らかになる、被害者たちの関係。誰がどういう動機で一連の殺人を犯しているのか。薄皮をはいでいくように、少しずつ真実が明らかになる。11文字の脅迫文
「無人島より殺意を込めて」
の意味が明らかになるとき、すべての謎がつながる。




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