2020年8月2日日曜日

【読書メモ】エレーヌ・フォックス『脳科学は人格を変えられるか?』(文春文庫)

 コップに水が半分あるのを見て「もう半分しかないのか」と思う人と、「まだ半分あるのか」と思う人。この違いはどこから来るのか。また「もう半分」という悲観的な人格を、「まだ半分」と思える楽観的な人格に変えることはできるのか。最新の脳科学による「性格の研究」の成果を紹介した本だ。

 興味深かったのは「記憶は変えられる」ということ。「記憶は変わる」ということは知っていた。海馬に保存された記憶を取り出して、すなわちその記憶を思い出して、また海馬に収納する。これを繰り返していくうちに、記憶は少しずつ変わっていくのだ。大事な記憶を変えたくないなら、あまり思い出さないほうがよいのかもしれない。
 これをもう一歩進めて、記憶を「変える」ことが可能になってきているのだ。それを応用して、PTSDの治療に用いることができるらしい。心的外傷となる記憶を海馬から取り出し(思い出し)、それをよい事象(快楽など)と結びつけることを繰り返していると「心的外傷となる記憶は悪いものではない」と脳が学習し、PTSDが治っていくというのだ。

 近い将来、PTSDに限らず、精神的な疾患はかなり治療できるようになるのかもしれない。私のサボり癖も、治してもらえるだろうか…。

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