「これぞSF」でありながら、ミステリーとしても秀逸
ロボットと人間はどこまで通じ合えるのか、そしてどこまで通じ合うべきなのか。SFの王道テーマを描いた名作。SFとしての完成度の高さは言うまでもないが、ミステリーとしても実によくできているところがニクい。
「宇宙人」の作った精巧なロボットとコンビを組んで殺人事件を追うことになった警察官が主人公。しかし、ここでいう「宇宙人」は八本足の生命体ではなく、人間なのだ。はるか昔に宇宙に旅立ち、地球とは異なる惑星で文明を築いた開拓者たちの末裔が、地球に帰ってきた。
彼らは地球に居住するが、そこで「宇宙人」が殺害される事件が発生。宇宙人側は地球人側に犯人がいると決めつけ、人間型ロボットを地球人側に送り込む。そのロボットと協同で事件の解決に当たる警察官が主人公だ。
この警察官は、いや地球人はみな、ロボットには懐疑的だ。ロボットの存在は人間の仕事を減らし、人間を破滅に追いやる悪の元凶とみなされているのだ。
この設定の元、人間とロボットの交流が描かれる。人間と機械の線引きはどこにあるのか。ロボットに心はあるのか。「これぞSF」というべき、王道テーマだ。
もう一つの軸は殺人事件。誰が、何のために宇宙人を殺害したのか。人間とロボットがお互いの知恵をあわせ、徐々に真相に近づいていく。ミステリーとしても実によくできている。これが名作たるゆえんだろう。
この本の出版(1954年)から半世紀以上が過ぎ、ついに人工知能が人間の知的活動の領域に入り込もうとしている。アシモフ氏はそんな未来を見越していたのだろうか。いま読んでも全く古くないどころか、いまこそ読むべき一冊だ。
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