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2024年11月21日木曜日

【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。
  スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。
  スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人には必読の一冊。
  電話、ラジオ、テレビ、マンガ、ゲームなどなど、「人間をダメにする」と言われた物はたくさんある。スマホもその1つに過ぎず、それほど騒ぐ必要はないのか、それともそれらとはレベルの違う恐ろしい道具なのか。それが明らかになる頃には、あなたやあなたの子どもたちの脳は、スマホに壊された後かもしれない。
 
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2024年11月15日金曜日

【読書メモ】湊かなえ『残照の頂 続・山女日記』(幻冬舎文庫)

 ブラックではない湊作品として話題になった『山女日記』の続編。前作よりもさらにパワーアップして帰ってきたと思ったのは私だけではないだろう。
 山女とは山に登る女子のこと。要するに山ガールだ。湊氏お得意の、一人称を変えながら話を進める手法で、さまざまな山女たちが、山に登って人生を振り返る。
 黒くない湊小説もよいものだ。というか、めっちゃよかった。まさか、湊小説で涙することになるとは思わなかった。やっぱり、何でも書けちゃうんやねえ。

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2024年10月23日水曜日

【読書メモ】福岡伸一『動的平衡3 チャンスは準備された心にのみ降り立つ』(小学館新書)

 夏の課題図書で娘が買った本を「面白かったで」と勧めてもらった。福岡氏の本は読んでみたいと思っていたので、これ幸いと読んでみたら確かに面白かった。
 中身は、福岡氏の科学エッセイだ。音楽や絵画にも博識な福岡氏のオシャレな文体で、科学の知識が語られる。生化学、生命科学の蘊蓄(うんちく)が流れるように伝わってくる一冊。




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2024年10月12日土曜日

【読書メモ】新川 帆立 『元彼の遺言状』(宝島者文庫)

 初めての帆立作品。デビュー作にして映像化もされた本作を読んでみた。
 主人公は容姿も頭脳も併せ持つ、キレキレの女性弁護士。しかし、お金が大好きで、人情が理解できない「堅物(かたぶつ)」だ。
 よくあるキャラと言えばそれまでだが、歴代のキャラの中でもいろんな意味で突き抜けている。このキャラを描いた時点で、帆立氏の勝ちは決まったようなものだ。
 ミステリーとしてツッコミどころはあるが、それは著者も承知のうえだろう。そこはおいといて楽しむのが正しい読み方だ。「このミス」大賞受賞も納得の面白さ。



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2024年9月16日月曜日

【読書メモ】鈴木宏昭『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』(ブルーバックス)

 ヒトが物事を認識するときにはさまざまなバイアスがあり、脳は事実を誤って解釈していることも多いのは、いまや常識となりつつある。その認知バイアスを、例を挙げることによって易しく説明したのが本書。よく分かっているようでよく分かっていなかった認知バイアスを、正しく理解することができる。
 認知バイアスはあっと驚く手品のような扱われ方をしがちだが、それが本質ではないことがよく分かる。また、決して不要なシステムではなく、むしろ進化の過程で必要だったものであることもきちんと説明されている。
 認知バイアスを、バイアスをかけずに説明した良書。




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2024年9月14日土曜日

【読書メモ】小川哲『嘘と正典』(ハヤカワ文庫)

 初めて読んだ小川作品。SFチックな話が6つ収められた短編集で、各話とも非常によく組み立てられている。
「ん? 何がどうなのかよく分からないけど…」と読み進めるうちに「あ、なるほど!」と最後はしっかりオチる。
 次々と話題作を生み出しているのも読んで納得。

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2024年9月12日木曜日

【読書メモ】宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出文庫)

 タイトルの通り、推し(応援しているアイドル)が燃ゆ(炎上する)ところから話が始まる。しかし途中からは、燃えているのは推しなのか、私(一人称の少女)なのか、よく分からなくなってくる。読んでいて痛い小説だった。
 青春小説という位置づけらしい。令和の時代の青春って、こういうものなのだろうか。

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2024年7月26日金曜日

【読書メモ】東野圭吾『ブラックショーマンと名もなき町の殺人』(光文社文庫)

 東野作品に新たなシリーズが誕生。新探偵はマジシャンだ。手品のように人の心を読み、殺人事件も解いていく。金にセコいのが玉に瑕という、いまどきの(?)探偵だ。
 捜査が進むにつれ、容疑者はある中学の同級生に絞られていく。一人、また一人と容疑者が減っていき、最後に残ったのはなんと…。これだけ容疑者を絞ってもらっても、犯人を当てられない自分が悔しい(笑)。ミステリーらしいミステリーだった。
 気になるのは、映像化されたときに誰がブラックショーマンを演じるのか。長身のニヒルなマジシャン探偵にふさわしいのは、伊藤英明か、それとも玉木宏か。東野氏はきっと誰かをイメージしながら書いたに違いない(笑)。




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2024年7月4日木曜日

【読書メモ】五十嵐律人『法廷遊戯』(講談社文庫)

 五十嵐氏の作品は初めて読んだ。噂に違わぬ、ハラハラドキドキの法廷ミステリーだった。

 この手の話を読むといつも思うのは、不起訴や無罪という結果は、被告が罪を犯していないことを示しているわけではないということだ。
 日本では、起訴されればほぼ有罪は確定だが、これは逆に言うと、検察は、確実に有罪にできる事件しか起訴しないということであり、少しでもグレーな部分の残る事件は不起訴となっているのだろう。不起訴=無実の証明ではないのだ。

 本作品でも、一人の女性が殺人で起訴される。状況からは殺人を犯したのは明らかなのだが、その女性はなんと無罪を主張し、しかも黙秘する。無罪の主張と黙秘という矛盾した行動の裏に隠された、驚愕の事実とは。

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2024年6月11日火曜日

【読書メモ】東野圭吾『クスノキの女神』(実業之日本社)

 クスノキシリーズの第2弾。今回も、クスノキを媒介とした「思い」のやりとりに、胸が熱くなる。主人公の直井玲斗の成長ぶりも頼もしい。
 東野氏の名作『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に通じる作品。謎解きではなく、東野氏の人情話を読みたくなったときにはお勧めのシリーズだ。

 本書は娘が学校の図書館で借りてきてくれたので、発売直後に読むことができた。本を返しにいったら、司書さんから
「東野圭吾の新しいのが入ったけど、読む?」
と勧められたのだそうだ。東野圭吾好きがバレているらしい(笑)。

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2024年6月8日土曜日

【読書メモ】宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)

 わが家には「本を買うのは文庫が出てから」という掟があるのだが、我慢しきれず、掟を破って買ってしまった。こんなことなら、もっと早く買っておけばよかった(笑)。
 舞台は私の住む、滋賀県大津市。その中の膳所という地域を中心に、成瀬あかりという少女の活躍を描いた短編連作集だ。
 連作集なので話が細切れで読みやすいのに、長編小説を読み終えたような満足感もある。これは成瀬あかりの、まっすぐでぶれないキャラクターのお陰だろう。大人気キャラになって、本屋大賞をはじめとする賞をとりまくり、すぐに続編が出たのも納得だ。

 ちなみに、宮島氏と私の共通点は、ネイティブの滋賀県民、大津市民ではないということ。2人とも、大人になってから大津市に越してきた、外様の滋賀県民、大津市民なのだ。
 滋賀県も大津市も、住んでみると、思っていたよりも全然よいところだった。野菜は美味しいし、びわ湖と比叡山・比良山系の組合せは最高だし、都会の便利さと田舎ののんびり感のバランスが絶妙だし、いやホンマに、大津市のマンション買ってよかったわ。宮島氏も、きっと同じように感じているに違いない(ホンマか)。それが本作品からあふれ出る「滋賀推し」「大津推し」「膳所推し」につながっている気がしてならない。

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2024年6月3日月曜日

【読書メモ】雨穴『変な家2―11の間取り図―』(飛鳥新社)

 映画化もされたベストセラーの続編。11の家(間取り図)にまつわる話が順に語られた後、「筆者」と栗原氏の2人による解決編へ。解決編では、11の家の謎がすべて繋がり、一つの絵として完成する。広げた話をきちんと着地させる手腕は、相変わらずお見事だ。
 話が細切れで読みやすいのに、一つの大きなストーリーを読み切った満足感が得られる。これが、ネットで短い文章を読み慣れている世代にウケている理由だろう。
 揚げ足をとるなら、解決編は2段階になっていなくてもよかったような?

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2024年5月5日日曜日

【読書メモ】深木章子『殺意の構図』(光文社文庫)

 初めて読んだ深木作品。なるほどよく組み立てられたストーリーだ。「構図」という言葉をタイトルに使いたくなるのも頷ける。

 一人称を変えることにより、さまざまな角度から事件に光が当たる。
「なるほどそうか」「確かにそうだよね」「そうか、この人だったか」
と納得しているうちに、話は二転三転。最後は意外なところに着地する。
 二転三転するストーリーは、どこかに飛躍があったり、あっと驚く新事実が出てきたりすることが多いが、本書にはそれがない。
「なるほどねえ」
と納得ずくめで話が進んでゆく。
 エピローグもよかった。最後はそこにつながるとは。




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2024年4月24日水曜日

【読書メモ】東野圭吾『あなたが誰かを殺した』(講談社)

 加賀刑事シリーズ、最新第12作。娘が学校の図書館で借りてきてくれたので、文庫化前に読むことができた。
 このところ、加賀の人生に絡んだ話が多かったが、シリーズの原点回帰。加賀は探偵役に徹して事件を推理する。いかにもミステリーなミステリー小説だ。

 別荘地で起きた連続殺人事件は、犯人が自首して一応の幕を下ろしたが、釈然としない部分が多く残った。そこで遺族が集まり検証会が行われ、加賀が探偵役となり理路整然と謎を解いてゆく。あらゆる可能性が排除され、最後に残った結論は…。

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2024年2月24日土曜日

【読書メモ】弘山勉『自分史上最速の走りを手に入れる! 限界突破のランニングフォーム』(KADOKAWA)

 筑波大学OBにして、現監督の弘山氏が、ランニングフォームについて語った本。理論派の弘山氏らしく、ブレがなく一貫した考えに基づいて解説されるので、非常に説得力がある。
 まず基本のエアポジ(空中に浮いたとき)とパワポジ(着地したとき)の2つの局面をしっかり理解してから、その間をつなぐ場面や、各部位の動きを切り取って解説する。なるほど、これらの動きをつなぎ合わせることができれば、限界突破できるだろう。

 ある程度はフォームについての知識を持っているランナーが、細部の動きの意識を学ぶには最適の教科書だ。
 私も最近、フォームを見てもらう機会があり、上体の捻転不足や右足の外旋などを指摘されたが、その改善に大きなヒントをもらうことができた。ぜひフォームを改善して、来季には限界突破といきたいものだ。
 ただ、ランニングに限らず、「フォーム」には意識が介在しすぎるとろくなことがない。「このように動かそう」という意識が強すぎるとダメで、それがいきすぎるとイップスになるのだろう。無意識に動けるようにならないとダメだが、それが難しい。だからドリルによる動き作りが必要なのだと理解している。頭では分かっていても、体はなかなかその通りには動いてくれないものだ…。


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2024年2月20日火曜日

【読書メモ】雨穴『変な絵』(双葉社)

「変な家」に続く「変な」シリーズ第2弾。絵に隠された謎が解けるたびに、新たな事実が明らかになる。よく組み立てられたストーリーだ。
 短い話で区切られており、テンポがよく、たいへん読みやすい。にもかかわらず、全体としてはストーリーがきちんとつながっていて、最後は話が閉じる。お見事。
 スマホ世代は長い文章を読むのが苦手な人が多いのかもしれないが、それは「長いストーリーを求めていない」ということではないのだろう。本書が売れているのがその証拠だ。本書はまさに、長い文章が苦手な人にも楽しめる、長いストーリーだ。

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2024年2月10日土曜日

【読書メモ】蛭川皓平『セイバーメトリクス入門』(水曜社)

 娘に買ってあげた本を自分も読んでみたら、目から鱗。セイバーメトリクスは、なんとなく知ってるつもりだったが、想像以上だった。野球の常識とされていた固定観念が、どんどん覆っていった…。10年後の野球は、おそらく今とはかなり違うものになっているだろう。
 最もよい打者は4番ではなく2番か3番におくべきとか、送りバントは得点の確率を下げるという程度のことは知っていた。しかしそんなのは序の口。守備力はチーム力にほとんど影響しないとか、捕手のリードの上手い下手は存在しないとか、打順を変えても得点にはほとんど関係ないとか、驚くべき事実が次々とデータで示される。
 他にもいろいろあるので、本書を読んで驚いてほしい。

 イチロー氏が「最近の野球は面白くない」と言っているように、昭和の野球を見てきた者としては、守備は度外視で、長打力のある打者ばかりが並んだチーム同士の試合など見たくない気もするが、日本の野球もその方向へ向かっていくのだろうか。

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2024年2月7日水曜日

【読書メモ】中山七里『魔女は蘇る』(幻冬舎文庫)

 中山氏の作品は初めて読んだ。
 バラバラの肉片に解体された死体が見つかる。いったい、誰が何のためにこのような惨殺を実行したのか。一方、被害者とその雇用主であった製薬会社の正体は。二つの謎が解けたと思ったら、ときすでに遅し? 最後は大活劇で幕を閉じる。
 徐々に謎が積み重なり、頂点まで達したと思ったらあとは一直線。ジェットコースターのような小説だった。最後は一気読み間違いなしだ。
 話の展開や薬物のディテールには突っ込みどころがたくさんあるが、それも含めて楽しむ作品ということにしておきたい。

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2024年1月18日木曜日

【読書メモ】浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』(角川文庫)

 娘に勧められて読んだ、就活ミステリー。なるほど、平成のノリだ。
 就活の集団面接で起きた「事件」の犯人は誰なのか。半分ほどのところで
「そう来るか。でも、それはちょっと無理があるんちゃうかなあ」
と上から目線で読んでいたら、そんなことはお見通しとばかりに話は一転。後半は一気呵成に終着点へ。やられました。
 意図してミスリードさせるのが巧みで、何度も前提がひっくり返る。道尾秀介氏の小説を思い出した。
 一面だけを切り取ってミスリードさせるのがいかに簡単か、改めて教えてくれる小説だ。テレビや新聞で見ることは、物事の一面に過ぎないことがよく分かる。

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2023年12月23日土曜日

【読書メモ】原田マハ『たゆたえども沈まず』(幻冬舎文庫)

 ゴッホは生前には評価されず、弟に生活を支えてもらっていたのは有名な話。その様子を、1900年前後のパリを舞台に描いた作品。そこに、日本人の画商を絡ませるところが上手い。ゴッホが苦しみつつ自死に至る過程を、鬼気迫る筆致で描ききった秀作だ。
 当時のパリの様子が伝わってくるのもグー。好景気に沸くフランスの首都で、紳士・淑女がサロンに集い、美術品を収集する。そこに日本文化が与えた影響は、日本人が書いた本だということを割り引いても、いかに大きかったかが分かる。
 読んだら、パリの美術館に行きたくなること間違いなし。

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【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...