今度はイカ京「が」恋する物語
『左京区七夕通東入ル』の続編・姉妹編。単体でも楽しめるが、前作を読んでいれば面白さは5倍(当社比)。ぜひ前作を読んでからこちらにとりかかってほしい。
その前作ではサブキャラだった山根が主人公。「イカ京を形にしたらこんな人になった」感じの大学院生だ。ちなみにイカ京とは、「いかにも京大生」の略で、あまりイケてない京大生を揶揄した言葉である。おもに理系男子学生で、チェック柄のシャツをジーンズに入れて、黒いベルトをしているのが典型的な姿だそうだ。
その山根が恋に落ちる。そして一途に彼女を想い、恋のジェットコースターで浮いたり沈んだりを繰り返す。そしてついに告白タイム。その結果は…。
という、粗筋だけを書けばいかにも単純な青春小説なのだが、そこがいい。20代前半の頃の、青臭くも瑞々しい感覚が蘇ってくる。寮の仲間たちをはじめとする脇役陣もキャラが立っていて、青春まっ盛りの自由さと躍動感が伝わってくる。葵祭や送り火など、京都の行事が節目のシーンを彩っているのもいい感じだ。
恋と仲間。青春とは切り離せない2大キーワードがてんこ盛りの恋愛小説。今回も元気をもらった。
ところで、主人公に感情移入するよりも、主人公を見守る父親のような感覚で読んでいる自分を発見。少し寂しい…。
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