『リング』、『らせん』を書いた鈴木光司氏は、実はイクメンだった
貞子でおなじみの『リング』、『らせん』。これらのホラー作品を書いた鈴木光司氏が子育てについて語った本である。ホラー作家というと、楳図かずお氏のようなガリガリ体型を想像しがちだが、鈴木氏はその真逆のマッチョマンなのだそうだ。
それだけでも意外だが、さらに鈴木氏は二人の娘さんをもつイクメンである。『リング』でブレイクする以前から、すでにお子さんが生まれていた。その頃、鈴木氏は小説では食っていけず、塾講師や家庭教師をしながら小説を書き、高校教師の奥さんを主夫として支えていたのだという。
鈴木氏の子育て基本スタンスはこうだ。
「子育ては(もちろんしんどいことも多いけど)楽しいよ。子どもの成長に間近で接しないなんて、もったいない。やってみれば何とかなるって。迷ってるなら生んでみようよ」
実際に経験したからこそ、ここまで断言できるのだろう。
「そんなこと言っても、結局、子育ての中心になるのは母親でしょ。男目線で勝手なこと言わないでよ」
と言わせないだけのことを鈴木氏はやってきた。実経験に基づいた言葉なのだから、説得力がある。男の書いた子育て本というと、どうしても抽象論が多くなってしまいがちだが、本書はそれらとは一線を画している。
印象に残ったのは「昭和時代の父親像は捨てたほうがいい」という主張だ。父親は外で仕事を頑張り、背中で子どもを育てる。何か大きなことがあったときだけ、父親としての意見を示して威厳を保つ。昭和の時代はそれでよかったのだが、これからはそういう父親ではやっていけないだろうというのだ。なるほど、一理ある。本書は15年ほど前に書かれたものだが、いま求められている父親像は、確かにそういう方向に向かっている。
「パパももっと子どもと過ごす時間を増やしましょう」
というわけだ。
私も7歳(小学2年)の娘と5歳(保育園年中組)の子どもがいる。(妻に言わせれば「まだまだ足りないわよ」なのだろうが)子育てには時間を割いてきたほうだと思う。昭和のパパよりはもちろん、現在の平均的なパパよりも、子どもと過ごす時間は長いほうだろう。
こう書くといいパパのようだが、一方で「もっと仕事にエネルギーを注ぐのが本来なのでは」という迷いもあった。決して仕事をサボっているわけではないのだが、ワーク・ライフ・バランスがライフのほうに傾きすぎているように感じていたのだ。しかし本書を読んで
「これはこれで、ありなのかな」
と思えるようになった。ありがとうございました。
一つ難点をあげるなら、私には欄外のコメントはいらなかった。原稿の量が少なかったためか、埋め草的に「ママ代表」のコメントが欄外に書いてあるのだが、これは的外れだったような…。
とはいえ、これは私が男性だからであり、女性にとっては「ママ代表」の言葉にむしろ共感を覚えるのかもしれない。
実はイクメンだった一流作家。一方的に親近感を持ってしまったのは私だけではないだろう。
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