2015年7月13日月曜日

【書評】湊かなえ『母性』(新潮文庫)

今回もドンヨリ…。でも「気分悪いなあ」と思いつつ、また読んでしまう。


 人の悪意や心の闇を描き出すことにかけては、現代日本ナンバーワン(当社比)の湊氏。今回のテーマは「母娘関係」だ。母親が子を愛する心、すなわち「母性」は女性が生まれながらに持っているものなのか、それとも社会的な観念に過ぎないのか。

 今回も語り手(一人称)が入れ替わる。各章は母親の手記と娘の手記の2部構成になっており、同じ事実が母と娘から語られる。一人称を入れ替えることにより、事実に違う角度から光が当てられる。同じ事実でも、見方が変わればこんなに違ってしまうのか。いつものことながら、見事な手腕である。
 懸命に娘を愛そうとする母、懸命に母の愛を求める娘。お互い、求めている方向は同じはずなのに、どんどん離れていく二人。これだけでもドンヨリと重いのに、母娘の周囲の人間たちがこれまた嫌な人ばかりで、ますますドンヨリーヌなのだ。

「爽快」「すっきり」などとは真逆の読後感。濃厚な豚骨ラーメンを汁まで飲み干した後のようなムカムカ感が残る。しかし不思議なことに、しばらくするとまた湊作品を読みたくなるのだ。この点でも濃厚豚骨ラーメンと同じなのかもしれない(?)




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