◆唾石発見◆
転職を控えた今年(2025年)の2月に、行きつけの歯医者さんからクリーニングの案内が来た。東京に転職する前に、挨拶をかねて訪れたら、歯科衛生士のお姉さんに
「前回からもう10年以上経ちますので、久しぶりにレントゲンを撮りましょう」
と提案されたのでパシャリ。すると先生が出てきて
「かなり大きい物が写ってます。おそらく唾石だと思います。こんなに大きいのは珍しいんですが違和感ないですか? 紹介状を書きますので、口腔外科で診てもらってください」
とのこと。このときは、口腔外科に紹介っていっても、ちょっと切って取り除くだけだろと思っていた。
◆唾石とはなんぞや◆
ところで唾石とは、唾液が石灰化したものである。それが顎下腺にコロンと存在しているのだ。別に不具合はないので、そのままにしておいてもよさそうなのだが、動き出して唾液の通り道をふさいだりすると、炎症が生じたり、痛みが出たりする。結石と似たようなものらしい。
不具合が出てから緊急手術をするよりも、予定を立てて取り除くほうが安心・安全なのだそうだ。そりゃそうやわな。
◆手術決定◆
東京へ移った後、口腔外科を受診してCTを撮った結果、やはり唾石であることと、顎下腺内に存在することが確定した。ここまで診てもらった歯医者さん全員が
「こんなに大きいのは珍しいんですが違和感ないですか? 取ったほうがよいと思いますけどねえ」
という意見。じゃあ、取ってもらおうと決断したら
「わかりました。では3泊4日で入院してもらいますね」
とキタ。えっ、摘出のメリットやデメリットはお聞きしましたが、3泊4日とは聞いてないんですけど? 日帰り手術くらいを想定していたので面食らったが、いまさら「じゃあやめます」と言えるほど図太くないので、手術することが決定してしまった…。
まさか、医療費を稼ぐために騙されてないよなと思って、帰って調べてみたら、唾石摘出術では、3泊4日はふつうで、1週間入院することもあるらしい。意外に大ごとになってしまったなあ。
◆いざ入院◆
手術前日の朝に入院。朝は手続きだけで、お昼ご飯は最後の晩餐(昼餐?)で外食できるかもとか思っていたら、そのまま入院で外出禁止だった…。
その日は、説明や問診を受けて終了。暇をもてあまさなかったのは、私用のPCとスマホ、会社のPCとスマホの、4台の機器を持ち込んでいたためだろう。
できる仕事をぼちぼちやって、家族と連絡をとって、晩ご飯を食べて、野球中継を見ていたら消灯時間。こんな早い時間から寝られるかなあと思っていたら、ぐっすりとはいかなくても、それなりに眠れた。
◆手術当日◆
私の手術はこの日の2番目で、午後2時ごろからの予定だが、1番目が長引くかもしれないと聞いていた。朝・昼は絶食で、昼前からは飲み物もNG。緊張のため、空腹感はないが喉の渇きはあり、水分は取ってないのにトイレは何回も行った。
午前は、前日同様できる仕事をぼちぼちやって、午後は読書。それなりに緊張したが、仕事も読書も普通にできた。前の手術が案の定やや長引いて、待たされている間に、早く手術してほしいという前向き(?)な気持ちが出てきたのは思わぬ効果だったかもしれない。
ちょうど持ってきた本を読み終えたところで、準備に入った。全身麻酔を受けても、本の内容を覚えているだろうか。
◆いよいよ手術◆
最後の確認をして、歩いて手術室へ入る。私ひとりの簡単な手術のために、歯科医が3名、麻酔医が1名(2名?)、看護師が数名ついてくれる。そりゃ高くつくわな。
手の甲から点滴をとり、酸素マスクをした後は記憶なし。大勢の人が行き来するような何の脈絡もない夢(のようなもの)を少し見たと思ったら、すっと意識が戻った。
「気がつきましたか? 手を握ってください」
と言われ、医師じゃなくて看護師さんと手を握れてラッキーやなとか思ったりしたのは麻酔の副作用だろうか(たぶん違う)。病室へ戻ったら、いくつか説明を受けて、そのまま放置されたのにはちょっと驚いたが、そんなものなのかな。
しばらくすると尿意を催したので、ナースコールしてトイレへ。ふらつくこともなく済ませることができ、座る姿勢もとれるようになった。
ちなみに、手術直前まで読んでいた本の内容は覚えていた。全身麻酔前の記憶が途切れることはないようだ。
◆最もつらかったとき◆
術後しばらくは、まだ麻酔も効いていたのか、それほど痛みもなく、すぐに日常に戻れそうだと思っていた。手術が無事に済んだことを家族に伝えて、プロ野球中継を見始めたころは調子がよかった。ただ、夕ご飯を食べようと思ってトライしたが、痛くて全然無理だった。
巨人のライデル・マルチネスが同点弾を浴びたころから、痛みが出てきた。トイレに行った反動で傷口が開いたのか、血もどんどん出てくる。その後、いったんは痛みも血も引いたのだが、次の回に巨人がサヨナラ負けを食らったころには、また痛みと血がぶり返し、寒気もしてきた。どんどん出てくる血をゴミ箱に出しながら、布団で寒さを耐えていた。痛み止めを飲んでも、なかなか効かない。ナースコールするかどうか迷っているうちに、だんだん痛みも寒気も収まってきた。いま思うと、看護師さんを呼ぶべきだったのだろう。
23時過ぎの看護師さんの巡回のときには読書する余裕も出て、普通に話せたので、最もしんどかったのは30分くらいだったのだろうか。血も収まってきたので、寝られるかなと思って横になったら、意外に朝まで眠れた。
◆手術翌日◆
朝食はつらかった。とにかく痛い。無理に食べなくてもよかったのかもしれないが、ちゃんと食べたいという義務感と、点滴が長引くのは避けたいという思いから、なんとか完食。食事が不自由なのは、QOLが激しく下がることを実感した。
食事以外はそれほど困ることもなく、ぼちぼち仕事をしつつ、ストレッチしたりしながら過ごした。しかし食事が不自由なのには難儀した。まだ食べ終わってないのに
「食べ終わってますか~」
と催促されときには、ゆっくりしか食べられない自分が情けなく、泣きそうになった。心も弱っていたのだろう。
入院前は、なんで手術の翌日に退院させてくれないのだろうと思っていたが、納得。これは、たしかにやめとくほうがええわ。
◆やっと退院◆
手術の翌々日の朝に退院。この頃には食事の不自由さも少しましになっていた。なるほど、このタイミングで退院なのは、ちょうどよいのかも。
退院したら解放感でいっぱいになると思っていたら、意外にそうでもなく、もうしばらく病院にいて、特に食事の世話をしてほしいなあという気持ちもあった。普通に食べられないので不安だったのと、看護師さんたちのお陰で居心地がよかったのと、両方だろう。
◆術後の経過◆
手術、なめてました。抜歯の延長くらいの簡単なものだと思っていたら、思いのほか傷が深い。食事が不自由なのは、本当にストレスだった。
これを書いているのは、退院後2日、術後4日目の夜。今日は仕事も行った。だんだん食事も楽になってきたが、まだ普通には食べられない。
麻痺やしびれなどの後遺症がいまのところないのはありがたい。神経を傷つけずに、上手に摘出してくれたのだろう。
◆まとめ◆
病棟に体を動かせる場所を作るとよいと思った。口腔外科という性質上、若い患者や首から下は元気そうな患者が多かったので、可能な範囲で運動できるようなスペースを作れば、社会復帰も早まるのではないだろうか。ウオーキングゾーンとストレッチゾーンの設置と、リハビリスタッフの配置を望みたい。
今回は人生初の入院、手術、全身麻酔だった。すすんで経験したいことではないが、命に別状のない病気で入院できたのは、気楽でよかったかな。
看護師さんの、白衣の天使というたとえにも大いに納得。こりゃモテるだろうなあ。あまりにモテすぎると業務に支障が出るだろうし、かといって線を引きすぎると
「あそこの看護師、態度悪いで」
と言われるだろうし、案配が難しい商売やねえ。

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