映画は映画で楽しめると言えなくもないが…
柳広司氏原作の小説を映画化したもの。ちなみに私は原作の大ファンである。原作では、クールでイケメンなスパイが、世界を股にかけて暗躍する。その活躍ぶりは
「地味だけれどもカッチョいい」
「目立たないけどイケてる」
のだ。小説の書評は下記を参照してほしい。
書評 柳広司『ジョーカー・ゲーム』(角川文庫)
書評 柳広司『ダブル・ジョーカー』(角川文庫)
書評 柳広司『パラダイス・ロスト』(角川文庫)
この原作の絶妙な雰囲気がどのように映像化されているのか、楽しみに観たのだが…思いっきり裏切られた。同じなのは舞台設定と「イケメン」だけ。主人公のスパイが
「お前の弱点は優しさだ」
などと指摘されているようではD機関失格だ。スパイの完全無欠ぶりが原作の醍醐味の一つなのに…。
そして映画のクライマックスは、爆弾や銃弾が飛び交うドンパチシーン。「地味だけれどもカッチョイイ」「目立たないけどイケてる」とは真逆の展開にため息。巨乳のヒロインが登場するのもお門違いだ。続編を匂わせるような終わり方だったが、観ることはないだろう。
今さらフォローするのもアレだが、映画単体としては楽しめるし、小説とは全く別物と思えばよいのかもしれない。
しかし、小説の雰囲気を期待している人は決して観ないほうがよいだろう。原作の魅力はほぼ消え去っている。
柳氏は満足しているのだろうか…。
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