本作は、1992年に文庫が刊行された、東野さんの初期の作品。
十字型をした屋敷で女性が自殺する。そして四十九日の夜、今度はその夫と秘書(浮気相手)が殺される。夫妻の姪の視点から物語は進む。
殺人事件の犯人は、本書の半ばあたりで明らかになる。
「まだページが残っているなあ。このままで終わるはずがない」
(こういうのが分かってしまうのが紙の本の欠点であり、この欠点の克服が電子書籍に期待するところの一つなのだが、それはまた別の話)。
主人公である夫妻の姪は、事件の解決に疑問を持ち、真相に迫っていく。そして起こる第二の殺人。ついには真犯人が明らかになり、そしてラストはお得意のどんでん返し。またしても、東野さんの筆力、構成力に引き込まれ、あっという間に読み終えた。「毎度おおきに」てなところである。
特徴的なのは、ピエロの人形から見た情景が間に挟まれることだ。この視点を挟むことにより、生身の人間の動きからでは得られない情報がストーリーに加わり、ミステリーにスパイスをきかせている。東野さんらしい、チャレンジングかつ魅力的な試みだ。
動機の点で少し物足りない部分はあり、鍵を握るトリックにも若干無理がある気がしないでもないが、少ない登場人物の絡みが巧みに展開されていて、臨場感のあるミステリーに仕上がっている。
主要女性陣たちの美人セレブっぷりに注目(締めはそれかよ)。
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