夫婦二人と一女一男で暮らす、さる山家。貯金はないけどローンはある。そんなときに急に収入が途絶えてしまったら、当然、ローンは返せなくなる。こんな状況に突然陥ったとき、いったいどう行動すればよいのか、何から始めればよいのか。私も含め、多くの人は途方に暮れるしかないだろう。
さる山家の場合、知り合いに経営コンサルタントがいたのが幸運だった。取れるもの(失業保険以外にも、いろいろあるらしい!)は取り、可能な限り生活を切り詰め(「便利」と「必要」は違う!)、必要なところには思い切って資本を投下し(父さんの独立資金)、プロの指導の下で生活を立て直していく。その様子が、とても前向きに書かれているところに好感が持てる。
本書には多くの教訓が書かれているが、その最たるものが
「善意の第三者(素人とも言う)の意見に振り回されてはいけない」
ということだ。突然失業したとなれば、多くの人が心配し、アドバイスしてくれるだろう。もちろんみんな、よかれと思って知恵を貸してくれるわけだ。
しかし、それがマイナスに働くことが多いのだという。非常事態に際し、素人のうろ覚えの知識ほど危ないものはないらしい。非常事態に陥ったら至急すべきことは
「プロに相談」
これに尽きるのだそうだ。本書を読むと、それがよく分かる。
もし万が一、さる山家と同じような状況になった場合、本書を読んでいれば最悪の道はたどらずに済むだろう。
「本書のお陰で一家心中しなくて済みました」
てなことになるかもしれない。
ただ逆にいうと、そういった非常事態にでもならない限り、本書が「直接」役に立つことはないかもしれない。しかし苦境に陥ったとき、さる山家の精神は道しるべになってくれるだろう。前向きに、プロの指導の下で、周囲の力を借りつつ、生活を立て直していくという精神は、どんな困難に立ち向かうときにも共通の考え方だ。
私は、もし会社を辞めて独立したときに仕事がポシャったらどうなるのか、という観点から本書に興味を持った。
「ほほう。意外と何とかなるもんやな」
と思ってしまう私は、もう少し世間の荒波に揉まれつほうがよいのかもしれない。