昨年(2012年)「ヒッグス粒子発見、ほぼ間違いなし」と発表されたように、宇宙の成り立ちや仕組みが、このところ急速に解明されつつある。何だかワクワクする話である。
「どんな発見があったのか、何が分かったのか、理解したい」
と思うのは私だけではないだろう。
しかし、それらの発見は、素粒子論、相対論、量子論など、難解な理論の上に立つものである。素人のわれわれがワクワク感を共有しようと思っても、なかなか難しい。
そんなわれわれのために、青野氏が筆を執った。青野氏は科学者ではなく、宇宙論に関しては、いわば素人である。しかし素人だからこそ、素人である読者の気持ちや、「どこが分かりにくいか」のツボをよく心得ている。さらに青野氏は、書くことにかけてはプロである。分かりやすくないはずがない。
本書はヒッグス粒子の解説(第1章)から始まり、ビッグバンの現在の理解(第2章)、暗黒物質(第3章)、暗黒エネルギー(第4章)を順に説明し、最後に今後の展望を述べる(第5章)という構成になっている。まさに本書のタイトル通り
「宇宙はこう考えられている」
が要領よくまとめられている。現在のホットな宇宙理論を簡潔に概観したい方には是非勧めたい一冊だ。
私は、科学者が啓蒙書を記すときの最大のネックは
「科学者たる以上、不正確なことは書けない」
などの理由で、分かりやすくかみ砕けないことだと思う。読者にとっては、少々不正確であろうと、身近な比喩などで説明してくれるほうが分かりやすいのだが、なかなかそういう書き方はしてくれないのだ。
だが、青野氏には科学者のようなヘンな気負いがない。本書では、厳密な正確さよりも「読者へのわかりやすさ」が優先されているのがよく分かる。入門書としては、こちらのほうがありがたい。
一つ気になったのは
「こういう比喩は必ずしも正しくなく、科学者には認めない人もいるかもしれないが……」
などという但し書きが、たびたび付け加えられていることである。
「自分は宇宙理論をきちんと理解しているわけではない」
という負い目(?)や、取材して名前も出している科学者への配慮から、こういう記述が目立つのだろう。だが、それがあまりにたびたび出てくるので、やや目についた。
「厳密には正しくない比喩も出てきます」
などと最初に断っておき、後は但し書きなしに書いてもよかったのではないか。
とはいえ、内容が損なわれるわけではないし、これもあげあし取りか。
最近のこの分野(宇宙理論や素粒子論)の一般書の充実ぶりには目を見張るものがある。他分野の研究者も、ぜひ続いてほしいものだ。
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