2014年9月9日火曜日

書評 佐々木譲『人質』(ハルキ文庫)

携帯電話OK、トイレも自由に行けるという、ちょっと変わった監禁もの


 札幌のレストランで起きた人質監禁事件と、政治家が不法に得た大金を奪い取ろうとする恐喝事件。この二つの事件が背後で絡み合いつつ、息詰まる駆け引きが繰り広げられる。
 人質事件を担当するのは、北海道警の佐伯や津久井のチーム。佐々木氏の作り出した名キャラクターたちが、今回はどのように事件を解決するのか。佐々木氏お得意の、緊迫スリルサスペンス。

 人質事件では、犯人たちが人質に携帯やスマホを使わせるのが、本作品の特徴。武器や暴力で威嚇するわけでもなく、人質にはあくまで「協力」という形を取らせるのだ。しかし、決してユルイわけではない。現場の緊張感がビシバシ伝わってきて、ページをめくる手が止まらない。謎解きやどんでん返しがあるわけではないが、あっという間に読み終えてしまった。
 限定された空間を設定し、そこで起こる事件の緊迫感を書ききる手腕には「毎度お見事」としか言いようがない。

 今回も、佐伯の「男っぷり」がいい味を出している。初期の頃よりも、ハードボイルド指数がかなりアップしているように感じるのは私だけだろうか。




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