「罪を背負わせた者」と「罪を背負わされた者」。この対比が描く、ひたすらに重いストーリー
何と重いストーリーだろう。過酷な運命を背負いながらも、前向きに健気に生きる少女の姿が心を打つ。周囲の大人たちは、ドロドロワールドにはまり込み、さらに少女を傷つける。
「罪を背負わせた者」と「罪を背負わされた者」。このキリスト教的な対比が本作の骨子を貫いている。背負わせた側と背負った側、それぞれの苦悩が積み重なり、ページをめくる手も、どんどん重くなってゆく。
人生の苦悩を描いた作品はたくさんあるが、それを「背負わせた」側にむしろ焦点が当てられているのが恐ろしい。苦悩を背負った側がそれを克服してハッピーエンド、ではないのだ。苦悩を背負わせた側の醜い生き様、すなわち「罪」が晒されているところが重い。
罪、罰、償い。これらが見事に描かれている名作。
【粗筋】
1964年に書かれた、三浦氏の処女作にして代表作。愛娘を殺害された父親が、妻への腹いせに、妻には秘密でその殺人犯の娘を養女に迎える。しかし、その秘密が妻にばれてしまう。
迎えられた養女は、父からは距離をおかれ、母からは憎まれ、過酷な少女時代を過ごす。しかし、血筋や血統が何よりも重要だった時代に、前向きで明るく生きていく養女の様子が健気で心を打つ。
ついに少女の気持ちが「氷点」に達したとき、すべては終わりを迎える。
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