非常に身近なサンマだが、その生態は意外に知られていない。つい最近までは、何年くらい生きるのかや、どこで産卵するのかなどの基本的なこともわかっていなかった。また、養殖もいまだに成功しておらず(これは、そもそも養殖する必要がないということもあるのかもしれないが)、なんと、1年以上飼育に成功した水族館も、つい最近まではなかったそうである。近年になって、福島県の「アクアマリンふくしま」という水族館が、はじめて展示に成功した。その苦労の様子を知りたい方は、次のサイトをご覧いただきたい。
http://www.marine.fks.ed.jp/scie_02.html
こうした研究の成果により、次のようなことがわかってきた。
まず、サンマの寿命だが、通常は1年でその生を終え、長くても2年で死んでしまうらしい。あれだけの大きさになるのだから、3~5年は生きるのかと思っていたが、意外である。専門家も、ずっとそのように考えていたらしいが、ハズレだったわけだ。
引き続き、簡単にその一生を追ってみよう。産卵時期については、冬季がおもな産卵期だと考えられていたのだが、産卵はほぼ一年中行われていることもわかってきた。私もそれほど魚博士なわけではないが、年中卵を産む魚というのは聞いたことがない。他にもいるのだろうか。ともかく、これも従来の予想はハズレである。
次に産卵場であるが、西日本沖の黒潮の流域だとずっと考えられていた。しかし、もっと北の冷たい海でも産卵は行われており、遠いところでは、アメリカの西海岸でも産卵が確認された。サンマというと、東北地方~北海道の太平洋側に生息する魚というイメージだが、太平洋中に生息しているというわけだ。けっこうグローバルな魚なんですな。しかも、あちこちで卵を産んでいる。こういったことも、漁獲量が減らない理由なのだろう。
日本周辺で卵からかえった稚魚は、春になるとプランクトンを求めて北上し、北海道東部に集合する。ここでエネルギーを蓄え、夏になると産卵のために南下する。この、南下してくるサンマを捕まえて、われわれは食べているわけだ。脂がのって美味しいのは産卵前のサンマであり、産卵後は脂が抜けて美味しくなくなる。だから、東北や北海道で獲れたサンマが美味しいのだ。和歌山や四国でもサンマは捕れるのだが、産卵後で美味しくなくあまり食べられない。ただ、昔は紀伊(今の和歌山県)がサンマの本場であり、いまでもサンマ寿司は名物である。当時は紀伊まで脂ののったサンマが下りてきていたのか、それとも昔から脂の抜けたサンマで寿司を作っていたのか、いったいどっちなのだろう。また、一部のサンマは、太平洋側ではなく、日本海側を南下する。日本海産のサンマを食べたことはないが、美味しいのだろうか。一度、食べてみたいものだ。
そして、この南下の最中に卵を産み、サンマはその一生を終える。
調べれば調べるほど、従来考えられていたこととは違う結果が判明するサンマ。その身近さからくる「普通の魚」というイメージとは違い、けっこう謎の多い魚である。これからも、われわれを驚かせるような発見があることを期待したい。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)
2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。 スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。 スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...
-
さて、いよいよ「なんば」の謎に迫っていこう。 といっても「なんば」の意味自体は謎でもなんでもなく、要するにネギのことである。いったい、前回の長い前振りは何だったのだろうか…。 要するに、「鳥そば」といえば鳥肉入りのそば、「鳥なんばそば」といえば鳥肉とネギの入ったそばを意味す...
-
わが家では土曜、日曜の晩ご飯は主に父(私のこと)が担当している。そのメニューを絶賛(?)公開中。 家族構成は父(アラフィフ)、母(年齢非公表)、娘(高2)、息子(中2)の4人。 娘は中間テストが終わって部活モードに復帰。息子は相変わらず週末は野球三昧。 10月12...
-
2017年7月、45歳を目前に、突如ランニングを始めた。現在は52歳。 2020年12月の神戸トライアルマラソンでサブ3を達成! 自己ベストは2024年3月のびわ湖マラソンの2時間54分台。 ◆総 評◆ 福知山マラソン5週前。気温が下がり、ようやく日中に普通に走れる...
0 件のコメント:
コメントを投稿