2011年10月6日木曜日

意外に知られていないサンマの生態  謎の多いその一生 その2

 非常に身近なサンマだが、その生態は意外に知られていない。つい最近までは、何年くらい生きるのかや、どこで産卵するのかなどの基本的なこともわかっていなかった。また、養殖もいまだに成功しておらず(これは、そもそも養殖する必要がないということもあるのかもしれないが)、なんと、1年以上飼育に成功した水族館も、つい最近まではなかったそうである。近年になって、福島県の「アクアマリンふくしま」という水族館が、はじめて展示に成功した。その苦労の様子を知りたい方は、次のサイトをご覧いただきたい。

http://www.marine.fks.ed.jp/scie_02.html

 こうした研究の成果により、次のようなことがわかってきた。
 まず、サンマの寿命だが、通常は1年でその生を終え、長くても2年で死んでしまうらしい。あれだけの大きさになるのだから、3~5年は生きるのかと思っていたが、意外である。専門家も、ずっとそのように考えていたらしいが、ハズレだったわけだ。
 引き続き、簡単にその一生を追ってみよう。産卵時期については、冬季がおもな産卵期だと考えられていたのだが、産卵はほぼ一年中行われていることもわかってきた。私もそれほど魚博士なわけではないが、年中卵を産む魚というのは聞いたことがない。他にもいるのだろうか。ともかく、これも従来の予想はハズレである。
 次に産卵場であるが、西日本沖の黒潮の流域だとずっと考えられていた。しかし、もっと北の冷たい海でも産卵は行われており、遠いところでは、アメリカの西海岸でも産卵が確認された。サンマというと、東北地方~北海道の太平洋側に生息する魚というイメージだが、太平洋中に生息しているというわけだ。けっこうグローバルな魚なんですな。しかも、あちこちで卵を産んでいる。こういったことも、漁獲量が減らない理由なのだろう。
 日本周辺で卵からかえった稚魚は、春になるとプランクトンを求めて北上し、北海道東部に集合する。ここでエネルギーを蓄え、夏になると産卵のために南下する。この、南下してくるサンマを捕まえて、われわれは食べているわけだ。脂がのって美味しいのは産卵前のサンマであり、産卵後は脂が抜けて美味しくなくなる。だから、東北や北海道で獲れたサンマが美味しいのだ。和歌山や四国でもサンマは捕れるのだが、産卵後で美味しくなくあまり食べられない。ただ、昔は紀伊(今の和歌山県)がサンマの本場であり、いまでもサンマ寿司は名物である。当時は紀伊まで脂ののったサンマが下りてきていたのか、それとも昔から脂の抜けたサンマで寿司を作っていたのか、いったいどっちなのだろう。また、一部のサンマは、太平洋側ではなく、日本海側を南下する。日本海産のサンマを食べたことはないが、美味しいのだろうか。一度、食べてみたいものだ。
 そして、この南下の最中に卵を産み、サンマはその一生を終える。

 調べれば調べるほど、従来考えられていたこととは違う結果が判明するサンマ。その身近さからくる「普通の魚」というイメージとは違い、けっこう謎の多い魚である。これからも、われわれを驚かせるような発見があることを期待したい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...