2011年10月6日木曜日

知ってるようで知らなかったノーベル賞 その7

5章 どのように受賞者を決めているの?

 「誰が」ノーベル賞の受賞者を決めているのかはわかってきたが、それでは彼らは「どのように」受賞者を選んでいるのだろうか。今回はそれをみていこう。
 前回も述べたように、まず、ノーベル委員会が全世界の研究者や過去のノーベル賞受賞者などに、受賞者にふさわしい人を推薦するよう依頼する。今回も化学賞の場合を例に説明していくと、約3000人の研究者に推薦を依頼するそうだ。
 しかし、この3000人はどういう基準で選ばれているのだろうか。いちおう、「世界中の大学の教授から選ばれた者、過去のノーベル物理学賞と化学賞の受賞者、スウェーデン王立科学アカデミーのメンバー」と公表されているが、詳細は明らかになっていない。とくに気になるのは、世界中の大学の教授から選ばれた者だ。独自の基準があるのか、それともテキトーに送っているのか、何か他の方法をとっているのか、知りたいところである。おそらく、何名かの日本の研究者にも依頼がきているのだろうが、誰のところにきているのか具体的には耳にしない。公表してはいけないことになっているのだろうか。そうでなければ、「私のところには毎年きてますよ」とか「ずっときてたけど、今年からこなくなったよ…」とか、教えてくれる研究者がいてもよさそうなものだが。

 この推薦の依頼が毎年9月に行われる。ノーベル賞が発表されるころには、すでに次の年の選考が始まっているというわけだ。そして、推薦の締め切りが次の年の1月末日。同じ研究者が複数の推薦を受けるため、この時点で候補者は約250~300名に絞られる。
 引き続き、ノーベル委員会は、外部の専門家に意見を求める。ノーベル委員会には入っていない外部の研究者の意見を求めるのだろうが、なぜ外部の意見が必要なのだろうか。これは推測になるが、この時点でかなり候補者を絞るため、それぞれの分野に詳しい研究者の意見を聞いているのではないだろうか。現在は、各研究者の専門領域が非常に細分化されているため、候補者の研究の価値を見極めるには、近い分野の研究者の意見を聞く必要があるということかもしれないと考えたのだが、いかがだろうか。
 こうして候補者を絞り、ノーベル委員会のメンバーは、スウェーデン王立科学アカデミーに提出するためのレポートを作成する。この時点では、まだ複数名の候補者が残っている。アカデミー賞でいえば、最終ノミネートの段階である。そして、ついに10月の初旬に、この最終候補者の中から受賞者が決定される。最後はスウェーデン王立科学アカデミーのメンバーによる多数決で受賞者が決まる。ただ、どういうメンバーによる多数決なのか、ここも詳細は明らかにされていない。私の調査不足もあるのかもしれないが、選考過程に不透明な部分が多いという印象を受けないだろうか。

 不透明といえば、ノーベル賞は、最終選考まで残った候補者の名前すらすぐには明らかにされない。「すぐには」と書いたが、公開が許可されるのはなんと50年後である。逆にいうと、今年は1957年の選考についての公開が許可されるのだが、その年の化学賞の受賞者はアレクサンダー・トッドというイギリスの研究者で、ヌクレオチドとその補酵素に関する研究によって受賞したらしい。その年に、彼と最後まで受賞を争った研究者はいったい誰だったのか…ということに興味のある人はほとんどいないだろう。

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