前回の最後に触れたように、「なんば」の語源にはもう一つの説がある。これは、たいへんわかりやすい説である。以下、紹介していこう。
江戸時代、大阪の難波(いわずとしれた「ミナミ」の中心地である)一帯ではネギが栽培されており、そのため関西ではネギのことを「なんば」と呼ぶようになった。そこから、ネギを使った料理も「なんば」というようになった、という説である。何ともわかりやすいではないか。インターネットで調べたところでは、この説を主張しているところが多かった。そして関東では、この「なんば」と、「西洋的な」という意味の「南蛮」が結びついて、ネギを使った料理を南蛮と呼ぶようになったという。
鳥なんばそばの「なんば」の語源が大阪の「難波」だったとは、たしかにおもしろい。そして、何度もいうように、わかりやすい。そのため、この説が広まっているのだろうが、どうもこの説はちょっと怪しいようだ。私のここまでの説明でも、関東でネギのことを南蛮というところの説明が、かなり怪しい気がしないだろうか。この「大阪の難波」→「なんば」説が怪しいことは、次のサイトに詳しい。そばに精通している方が、緻密な調査をもとに、説得力のある説明をされていると思う。
大阪・上方の蕎麦(トップページ)
西成郡難波村とネギ
なんば・なんばんの呼称
この他にも、「なんばそば」「なんばんそば」の語源を扱ったサイトはいくつもあるが、先にも述べたように、大阪の難波が転じたという説が有力だ。しかし、その説に異を唱えているところも見られる。もう、こうなってくると考古学の世界である。これ以上の調査は私の手に負えるところではない、と逃げることにしよう。
「おまえの意見なんか、参考にならん」という批判は無視して、ここまでの情報から私の意見を述べると、私も「大阪の難波」説には否定的である。「大阪の難波説はちょっとおかしいんじゃないの?」という意見に説得力があるように感じるからだ。
そういうわけで、私は前回の意見を推す。すなわち、古来中国の南蛮という言葉が日本に入ってきて、転じてネギやトウガラシなどを使った料理を指すようになったのがその由来だ、という説だ。いまでも「南蛮煮」という料理に見られるように、もともとは、南蛮という言葉はネギのみを指すわけではなかったのだろう。それがいつのまにか、そば業界では「ネギ」だけを「なんばん」や「なんば」というようになったのではないだろうか。
それにしても、関西では「なんば」、関東では「なんばん」という使い分けが現在でも残っているのは興味深い。アホとバカの境界のように、「なんば」と「なんばん」の境界がどの地域なのか、調べてみるのもおもしろそうだ。
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