久々に読んだ宮部小説。うーん、やはり面白い。
頭の芯が痺れるようなドンヨリした雰囲気の中で、ワクワク・ゾクゾクするストーリーが展開される。宮部さんの著作の中で、後の『理由』や『模倣犯』につながる位置づけの本なのだろうか。
「記憶を失った男女」と、「失踪した女子高生を追う女性」という、二つの視点から話は進んでいく。ある日、起きたらすっかり記憶を失っていた男女。いったい自分たちは誰なのか、なぜこんなところにいるのか。そこへ一人の男が現れ、協力者となる。
もう一方は、女子高生と仲良くなったある女性。なかなか他人にうち解けられない美人女子高生と電話相談室を通じて心を通わせたのだが、その女子高生が失踪。警察はアテにならないと、自ら捜索に乗り出す。
そして、この二つのレールが重なるとき、すべての謎が明らかに…というストーリー。
以上のようにあらすじだけ書くと、「記憶喪失」「怪しげな協力者」「謎の失踪」「それを追う素人」と、ありがちなテーマが並んでおり
「お約束な感じやなあ」
という印象を持つかもしれない。しかし、このお約束なテーマも、宮部さんにかかれば、ドキドキ、ワクワク、スリル満点のストーリーになってしまうのだ。このドキドキ、ワクワク感を味わいたい方は、ぜひ本書を読んでいただきたい。現在の日本を代表するストーリーテラーという評価も納得であろう。
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