映画の評価が高かったので、いずれ読んでみようと思っていた本。そのような形で本書を読んだ人も多かったのではないだろうか。
物語は一つの殺人を軸に進む。殺されるのは、あるOLなのだが、これが非常に気分の悪い女なのだ。
「殺されても仕方ないんじゃないの?」
という女の典型として描かれている。
そして、容疑者として追われるのが、これまた「頼むから、はよ死んでくれ」と言いたくなるようなボンボン大学生。
作者の吉田さんは、こういう「虫酸の走る」人物を描くのが非常にうまい。この二人の出てくる場面は、読んでいて気分が悪い。しかし、気分は悪いのだが、読むのをやめられない。どんどんストーリーに引き込まれていってしまう。
OL殺しの犯人は話の半ばで明らかになる。とはいえ、これは本書の主題ではない。むしろ、物語はそこから始まる。後半は、犯人と一人の女の逃避行である。逃避行を続けるにつれ、愛を深める二人。しかし、いよいよ追い詰められラストは…というのがストーリーの概要である。
本書の主題は、犯人やトリックを明らかにすることではない。では本書の主題とは何なのか。それが、タイトルそのまま「悪人」なのだ。
ある意味単純ではあるが、陰惨な殺人事件。いったい誰が「悪い」のか。「悪人」は誰なのか。殺された女がバカだったのか、きっかけを作った男がアホだったのか、それともやはり法を犯して人を殺した男こそが悪人なのか。そういうことを読者に問いかけてくる小説である。
文庫本のカバーの裏に書かれている(面白い手法やあな)、映画版の監督と原作者の対談や、裏表紙(表4と言われるところ)のキャッチを読むと「愛する者のためになら、人は立ち上がれる」と、いかにもこれが主題のように書かれているのだが、私にはこれはどうもピンと来なかった。逃避行を続ける二人の愛が、あまり深いとは感じられなかったのだ。
みなさんは、どうお考えだろうか。
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2011年10月18日火曜日
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