4章 誰が受賞者を決めているの?
ここまで、ノーベル賞の誕生の経緯や賞金について見てきたわけだが、この章では、いよいよ「いったい誰が受賞者を決めているのか」という疑問を解決していこう。
結論を述べるとあっけないのだが、受賞者を決定しているのは、ノーベルの遺言によって指名された機関である。具体的には、物理学賞と化学賞はスウェーデン王立科学アカデミーが、医学・生理学賞はカロリンスカ研究所が、文学賞はスウェーデン・アカデミーが、平和賞はノルウェー国会で選ばれた5名からなる委員会が、それぞれの受賞者を決めている。ちなみに、ノルウェー国会のことをストーティング(Storting)というのだが、なぜそういうように呼ぶのかはわからない(ご存じの方がいれば教えていただきたい)。また、スウェーデン王立科学アカデミーは、後に新設された経済学賞の選考も行っている。
スウェーデン王立科学アカデミーもカロリンスカ研究所も、ノーベル賞を選考するために作られた機関ではなく、実際に様々な研究を行っている研究機関である。つい先日(2007年5月22日)、日本の天皇と皇后が「リンネの生誕300年記念行事」に出席するために訪れたのはスウェーデン王立科学アカデミーだし、カロリンスカ研究所は「研究所」という名前がついているが、その実態は医科大学であり、世界でも有数の医科系研究機関だそうだ。
スウェーデン王立科学アカデミー
カロリンスカ研究所
ノーベルがこれらの機関を指名したのには、いろいろな理由があるのだろうが、ノーベル賞が現在も存続し権威を保っているところから考えると、彼の選択は正しかったといえるのだろう。当然のことだが、ノーベルが遺言で決定権を与えたわけだから、ノーベルが他界したときにはこれらの機関はすでに存在していた。つまり、長い歴史を持った研究機関なのである。スウェーデン王立科学アカデミーは、当時の国王であるフレデリック1世が1739年に設立したスウェーデン王立アカデミーの一つだし、カロリンスカ研究所は1810年に軍医の研究施設として設立された研究所である。こんなに昔から「科学」していたとは、何とも驚きではないだろうか。
ここでちょっと気になるのは、これらの研究所に在籍する研究者には、ノーベル賞を受賞する資格があるのかないのかということだ。じつはこれが、「資格あり」なのだ。身内が身内を賞に選ぶというのは「そんなんアリかいな」と思わないでもないが、とくに問題視されていないところを見ると、選考は厳正に行われているということなのだろう。たとえば、カロリンスカ研究所からは、ヒューゴ・テオレル(Hugo Theorell)とトールステン・ウィーセル(Torsten Wiesel)という科学者がノーベル賞に選ばれている。もちろん、受賞したのは両者とも医学・生理学賞である。
2011年10月6日木曜日
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