神田さんの、日本料理に対する考え方、好み、思想などが語られる部分と、日本料理を作る際のコツや手法が披露される部分のバランスがよく、とても楽しく読めた。
一流の料理人は、ここまで客のことを考え、ここまで料理のことを考えて日々の営業を行っているのか。そりゃ家庭では同じ味は出せないわけだ。改めて、外食する価値が分かった気がする。
神田さんの考えの根本は「いかに客に喜んでもらえるか」だと言ってよいだろう。しかしこれは、一流の料理人には共通のことであろう。
とはいえ「かんだ」がカウンターのみの店である理由、またその席数が18である理由には感心した。カウンターの魅力というか、その本来のメリットを知ることができた。テーブル席に座ってコース料理を食べるのも楽しいのだが、この本を読むと、カウンターでおまかせ料理を食べたくなる。
ここまで読んでいただいて「なるほど、この本は一流の料理人が、その心意気を語った本なのか。面白そうだけど、書いてあることは想像がつくなあ」と思っている人もいるかもしれない。しかし、本書の魅力はそれだけではない。
本書のユニークな点は、神田さんの「味」に対する考え方が、最終的に「科学的」なところまで分解されているところである。もちろん料理というのは、感性や感覚によるところが大きいのだろうが、神田さんの場合、そこへ「料理の科学」がプラスされるのだ。
私が最も印象に残った例が「トマト」である。本書の66ページにその話題が出ている。野菜ではなく「お椀」の章である。
トマトは野菜の中ではグルタミン酸の含量が最も多いのだそうだ。日本料理でグルタミン酸といえば、昆布出汁である。昆布出汁(グルタミン酸)と鰹出汁(イノシン酸)の組み合わせこそ、日本料理のゴールデンコンビだということは、ご存じの方も多いだろう。ということは、昆布出汁の代わりにトマトを使えば、こちらもゴールデンコンビが成立するのだ。
たとえばうちの店では、夏になると鰹節の出汁で、トマトのご飯を出したりします。ほかにも、めんつゆでトマトをさっと煮て素麺と合わせたり、トマトを細かく切ってお出汁で軽く煮たものを揚げた白身魚にかけたりします。トマトの味噌汁も作ります。ええっ? と思われるかもしれませんが、鰹節にはトマトが絶対合うということがもうわかっているわけですから、間違いないのです。お客様皆さん驚かれますが、おいしいとおっしゃってくださいます。グルタミン酸とイノシン酸ですから、間違いないのです。
という具合である。
他にも、料理人の感性と料理の科学とのコラボレーションはいろいろと書かれているのだが、それは本書を読んで確かめていただきたい。
私は神田さんの料理は食べたことがないのだが、本書を読んで「ごちそうさま」と言いたくなった。そういう思いが伝わってくる本である。
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