2012年3月16日金曜日

書評 東野圭吾『秘密』文春文庫

 母から借りた東野小説の最後の一冊。なぜ本作が最後まで残っていたのか。それは、妻と娘が事故に遭い、娘の体の中に妻の精神が入るという設定に、娘をもつ父親として、読むのをためらっていたからだった。娘の体に妻が入るって…考えただけでもブルーだよなぁ。
 そんなわけで後回しになっていたのだが、これが大トリを飾るにふさわしい名作だった。もっと早くに読めばよかった。

 粗筋は上記の通り。娘の体に入った妻と夫との奇妙な共同生活を描いた作品。事故当時、娘は小学5年生。そこから20代後半までの十数年間の物語である。
 妻として接するべきか娘として接するべきか、悩む夫。最後には「愛する人の望むことを」と決断を下す。
 そして、涙の別れ。
 最後には東野さん得意のどんでん返しで、二度泣ける。

 家族を元にしたパラレルワールドを描いた東野作品という意味で『時生』と似た雰囲気を感じた。どちらもお勧め。涙腺の弱い人はティッシュを忘れずに。



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