さて、いよいよ「なんば」の謎に迫っていこう。
といっても「なんば」の意味自体は謎でもなんでもなく、要するにネギのことである。いったい、前回の長い前振りは何だったのだろうか…。
要するに、「鳥そば」といえば鳥肉入りのそば、「鳥なんばそば」といえば鳥肉とネギの入ったそばを意味するわけだ。同様に、「鴨なんばそば」であれば、鴨肉とネギの入ったそばということになる。
というわけで、今回はおしまい…。
としてもよかったのだが、この「なんば」、思いのほかたくさんの謎をもっているのである。せっかくだし、紹介していこうではないか。
まず、「なんばそば」と呼ばれるためには、ネギにも条件がある。立派なネギじゃないとダメだとか、白ネギじゃないとダメだとか、そういう話ではない。「刻みネギではダメ」なのである。長ネギ、しかも油で焼いた(もしくは揚げた)ネギでないと、正式な「なんばそば」とはいえない。現在は、油を使っていない長ネギを入れたものでも「なんばそば」として出している店もあるようだが、本来は油を使わなくてはならないそうだ。
また、関東では「鳥なんばんそば」「鴨なんばんそば」のように「ん」の文字が入る。前回の盛りそばざるそば問題とは違って、「鳥なんばん」と「鳥なんば」は同じものを指す。そして、鳥なんばんのなんばんを漢字で書くと南蛮となる。そう、チキン南蛮の南蛮と同じではないか。この南蛮(関西ではなんば)は、いったいどういう意味の言葉なのだろうか。ネギという意味ではなかったのか?
この南蛮という言葉にはいろいろな意味があるのだが、そもそもは中国人が南方の異文化の人々を蔑視するときに用いた言葉である。「南にいる野蛮なヤツら」という感じの意味だったのだろう。その言葉が日本に入ってきて、「東南アジア方面」を意味するようになった。江戸時代になると、その言葉の意味する地域はさらに広がり、インド、ついにはポルトガルやオランダなどの西洋も指すようになった。えらい広がりようである。そして、これらの国から入ってくる渡来物にも「南蛮」という言葉をあてるようになり、その代表がトウガラシとネギである。鳥なんばんや鴨なんばんの南蛮は、もちろんネギという意味で使われている南蛮である。一方、チキン南蛮や南蛮菓子といったときの南蛮は、「西洋風の」という意味で使われている。
というわけで、鳥なんばの「なんば」は、ネギを表す南蛮という言葉がなまって「なんば」と呼ばれるようになったのがその由来である。一件落着……とはならない。なんと、「なんば」の由来にはもう一つの説がある。続きは次回。
2011年10月4日火曜日
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