2015年9月8日火曜日

【書評】F・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(早川書房)

機械が心を持つようになったとき、われわれはどうすればよいのだろうか


 先日、映画『ブレードランナー』を観たので、その原作を読んでみた。
 粗筋は映画と同じ。近未来、人類は高性能アンドロイドの開発に成功。しかし高性能化に伴って、アンドロイドが心を持つようになってしまう。不満やねたみを抱えた一部のアンドロイドが、人類への反逆を企てる事件が頻発。それらの反逆アンドロイドを壊す(殺す)ことを職業とする警察官が主人公だ。主人公とアンドロイドとの追いつ追われつのせめぎ合いの結末やいかに。

 ディックの作品は初めて読んだ。ちょっと陰鬱な、独特の世界観。『ねじまき少女』と似た雰囲気を感じた。そして、噂には聞いていたが、やや難解なストーリー。事前に映画を観ていなければ、ついていくのがしんどかったかもしれない。舞台設定に関する説明がなく、おもむろに話が始まるのだ。
 しかし、ファンにとってはそこがよいのかもしれない。あれよあれよという間に引きずり込まれてしまい、気がつけば読み終えていた。
 本作品のテーマは「心」。アンドロイドが心を持つようになったとき、われわれ人類はそれを尊重すべきなのか、それともそれは作り物だから無視してよいのか。SFの王道テーマが見事に描かれた名作だ。

 分かりやすさを求めるなら映画が、よりディープな世界観を堪能するなら小説がいいだろう。舞台設定は同じだが、映画化にあたっていろいろひねってあるので、その違いを楽しむのももちろんお勧め。




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