2016年9月5日月曜日

【書評】筒井康隆『時をかける少女』(角川文庫)

SFをお茶の間に登場させた名作


 1976年に文庫版の初版が刊行された、筒井氏の代表作。設定はSFだが読み口は軽く、いまで言うラノベ的なノリだ。コアな読者だけを対象にしていたSFを、一般読者にも広めたのが、この作品なのかもしれない。SFをお茶の間に登場させたとは言いすぎだろうか。いや、むしろSFの枠は超えてしまった名作であり、SFの普及には役立っていない可能性も(笑)。

 本作が、実写映画、マンガ、アニメ映画などに転用されたのはご存じの通り。私はそのうち、細田守監督のアニメ映画を観たのだが、これもよくできている。舞台設定は原作を忠実に守りつつ、しかしストーリーは完全に別物。原作のエッセンスを損なうことなく、新たな21世紀版としてリメイクされている。リメイクのお手本とも言える良作だ。
 両作品ともお勧め。私は、いつもは「原作→スピンアウト(リメイク)」という順を推奨しているのだが、本作は例外である。どちらを先に読んでも(観ても)、両方とも存分に楽しめるだろう。ぜひ、ダブルで堪能してもらいたい。



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