2016年9月14日水曜日

【書評】横山秀夫『ルパンの消息』(光文社文庫)

尋問により事件が語られる、横山スタイルの原点


 横山氏のデビュー作。警察署内での尋問をベースに話を進めていく、横山小説の原点がここにある。
 尋問を介した、警察官と容疑者の駆け引きと心の動きが本書の醍醐味。敵対するだけでは情報は引き出せない。容疑者にときには寄り添い、ときには同調し、ときには脅し、容疑者の供述を引き出す。
 容疑者の供述によって、事件の皮が一枚ずつはがれていく。まるでマトリョーシカのような小説だ。最後に出てくるマトリョーシカは誰なのか。最後のどんでん返しはちょっとやり過ぎの気もするが、すんなり収まらないところも見事。

《あらすじ》
 15年前に、女性教師の自殺として片付けられた事件が蒸し返される。死んだ女性教師の勤め先であり、死亡現場でもあった高校に、当時通っていた元悪ガキ3名が取り調べを受ける。女性教師が死んだまさにその日に時効を迎えた3億円強奪事件も絡み、事件は混迷の度合いを深めてゆく。
 尋問の様子と、事件当時の場面が交互に語られ、少しずつ状況が明らかになっていく。いったい誰が何を隠し、何を企んでいたのか。ようやく事件の全貌が見えたと思われたとき、捜査主任の警察官に閃いたのは…。



商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。お買い物される際には、必ず商品ページの情報を確認いただきますようお願いいたします。また商品ページが削除された場合は、「最新の情報が表示できませんでした」と表示されます。
ルパンの消息 [ 横山秀夫(小説家) ]
価格:761円(税込、送料無料) (2016/9/13時点)

楽天ブックス

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿

【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...