2017年4月28日金曜日

【書評】泡坂妻夫『11枚のとらんぷ』(角川文庫)

伏線はられまくりの、ザ・ミステリー


 素人マジシャンたちが、公民館でショーを開催。いかにも何かありそうな展開だ。そして、素人ならではのさまざまなアクシデントが発生。ハトが死んだり、氷酢酸がばらまかれたり、子どもにタネを見破られたり…。これがただの小説であれば
「ワハハ」
と読み飛ばしてよいのだが、泡坂氏の作品となれば話は別。すべてが伏線のように思えてくる。あれも伏線か、これも伏線か。もう、何が本線で何が伏線なのか、ワケワカメだ。
 そして、やっぱり起きる殺人事件。さあ謎解きが始まる…と見せかけて、小説の中の人物が書いた小説が第2部に割り当てられている。これが殺人事件とどう結びつくのか。小説の中の小説という二重構造が、すんなり読むことを妨げる。
 第3部は解決編。すべての伏線が回収され、アッと驚く真犯人が解き明かされる…と思わせておいて。お見事。

 伏線に次ぐ伏線で、よい意味でまっすぐに読めない「ザ・ミステリー」。ビールを片手に読むと、ワケワカメ指数がさらにアップするので注意。



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]
11枚のとらんぷ改版 [ 泡坂妻夫 ]
価格:691円(税込、送料無料) (2017/4/28時点)

楽天ブックス

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿

【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...