2018年2月23日金曜日

【書評】辻村深月『冷たい校舎の時は止まる 上・下』(講談社ノベルズ)

10代の若者たちの瑞々しい感性


 辻村氏のデビュー作。8人の高校生を巡る物語だ。10代の若者たちの、青臭くも瑞々しい感性が見事に表現されている。大人になってもこういう感性を持ち続けることは難しいが、辻村氏は若い頃の思いを忘れずに保っているのだろう。これが、次々と青春小説をヒットさせる秘訣に違いない。
 読み口は軽くなく、むしろ重さを感じるが、それが瑞々しさを際立たせるのかもしれない。独特の雰囲気の小説だ。

 また、青春の機微にミステリーがうなく絡まっているところも見事。『そして誰もいなくなった』を連想させる、クローズドサークルが舞台設定になっている。アッと驚く結末もよく練られていて、ちゃんと話が閉じるのも気持ちよい。
 ただ、最後のシーンはいらなかったような。デビュー作なので、ハッピーエンドにこだわったのかもしれない。

《あらすじ》
 8人の高校生が校舎に閉じ込められる。自殺したクラスメートの記憶をなくした状態で、冷たい校舎に拘束される。いったい誰が8人を閉じ込めたのか。自殺したのは誰なのか。8人は順に姿を消していき、最後に残ったのは…。



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