2021年9月5日日曜日

【読書メモ】長江優子『サンドイッチクラブ』(岩波書店)、濱野京子『with you』くもん出版

 子どもたちが選んだ今年の課題図書をまとめてメモしておく。『サンドイッチクラブ』は小学校高学年向け、『with you』は中学生向けの作品。両方とも主人公(一人称)とそのパートナーの関係を描いた物語だ。

 『サンドイッチクラブ』は小学生の女子二人の友情が主軸。これという目標もなく「なりたい自分が分からない」という普通の小学生の珠子が、ちょっと変わり者だが成績抜群のヒカルと友人になり、「サンドイッチクラブ」を結成する。砂像作りでタッグを組み、ライバルの葉真(男子小学生)との対決にのぞむ。
 小学生女子のふわふわした焦燥感や友情、そしてほんのりした恋心もうまく表現されている秀作だ。

 『with you』の主人公も「なりたい自分が分からない」系の中3男子の悠人。成績抜群で優等生の兄へのコンプレックス、離婚した両親への反発、見いだせない人生の意味。「中学生男子あるある」な少年だ。
 その悠人が出会ったのが朱音。夜の公園で会話を交わすうちに、朱音が「ヤングケアラー」であることを知る。ヤングケアラー自身の悩みと同時に、ヤングケアラーに対してどのように接すればよいかという周囲の悩みも描かれているところがよい。
 中学生のラブストーリーに、ヤングケアラーという社会問題を見事に閉じ込めた、まさに夏の課題図書にふさわしい青春小説だ。

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