初めて読んだ池井戸小説。600ページを超える大作だが、まったく飽きることなく一気に読んだ。主要登場人物は多くなく、ストーリーも入り組んでおらず、非常に読みやすい。にもかかわらず内容は濃く、読後感はずしりと重い。
本書は社会派小説の範疇に入るのだろうが、山崎豊子さんのように硬派ではなく、高村薫さんのように重くなく、独特の軽いタッチで重いテーマを語っていく。「社会派ライトノベル」とでもいえばいいのだろうか(もちろん「ライトノベル」というのは悪い意味ではない)。重いテーマを軽く読ませる、現代にマッチした作風なのだと思う。私も好きだ。
本書のテーマはズバリ、建設業界の「談合」。中堅ゼネコンの若手社員である平太が、現場から「業務部」へ異動になる。この業務部こそが、談合を取り仕切る部署なのだ。
突如、業務部へ来ることになり、最初は談合に加わることに戸惑いを覚える平太だが、徐々に談合に染まっていく。
一方、平太の彼女は銀行員。談合などなくすべきだという風土の業界だ。
談合を「是」とする側と「非」とする側、双方の視点から談合がリアルに描かれる。一方は「談合は社会秩序を守るための必要悪」、もう一方は「談合など、業界の悪い慣習にすぎない」という意見。
「そんなの後者が正しいに決まってるやろ」
とお考えの方が多いだろうが、本書を読み進めるにつれ、その確信は揺らいでいくに違いない。果たして談合は是なのか非なのか。結論を出すのは本書を読んでからでも遅くないだろう。
にほんブログ村
2011年12月23日金曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)
2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。 スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。 スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...
-
さて、いよいよ「なんば」の謎に迫っていこう。 といっても「なんば」の意味自体は謎でもなんでもなく、要するにネギのことである。いったい、前回の長い前振りは何だったのだろうか…。 要するに、「鳥そば」といえば鳥肉入りのそば、「鳥なんばそば」といえば鳥肉とネギの入ったそばを意味す...
-
わが家では土曜、日曜の晩ご飯は主に父(私のこと)が担当している。そのメニューを絶賛(?)公開中。 家族構成は父(アラフィフ)、母(年齢非公表)、娘(高2)、息子(中2)の4人。 娘は中間テストが終わって部活モードに復帰。息子は相変わらず週末は野球三昧。 10月12...
-
2017年7月、45歳を目前に、突如ランニングを始めた。現在は52歳。 2020年12月の神戸トライアルマラソンでサブ3を達成! 自己ベストは2024年3月のびわ湖マラソンの2時間54分台。 ◆総 評◆ 福知山マラソン5週前。気温が下がり、ようやく日中に普通に走れる...
0 件のコメント:
コメントを投稿